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 「立ち入りが制限されていた場所にも人が住めるようになる」そのための基準が今問題になっています。

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 ICRP(国際放射線防護委員会)をはじめ世界の放射線防護の基準は、一般人の場合、自然放射線以外の追加線量限度は年間1mSvです。ところが、現在福島では年間20mSv以下の場所まで避難指示が解除されています。この方針については国連の人権理事会などから複数回にわたって日本政府に勧告が出されています。


国連諸組織から出された主な勧告・懸念
■2013年5月:国連人権理事会が選任した『健康に対する権利』特別報告者アナンド・グローバー氏による報告書。年20mSvを避難基準とする日本政府に対し、国際基準の年間1mSv以下になるまで、住民に帰還を促したり、賠償をうち切るべきではない等、と勧告。
■2014年:自由権規約委員会『福島第一原発事故によって影響を受けた人々の生命を保護するため全ての必要な措置を取ること』を勧告。
■2016年:女性差別撤廃委員会 日本政府が年20mSvを下回る汚染地域の避難区域指定を解除する計画について、『女性と少女に不均衡に偏った健康上の影響を与える可能性がある』と懸念を表明。
■2018年3月:国連人権理事会UPR(普遍的定期審査)にて日本政府の原発事故被災者への対応が批判された。
「UPRとは国連人権理事会が、4年に一度、全ての国連加盟国の人権状況を審査するもので、加盟国政府同士が相互に審査しあい、勧告されたことについてはフォローアップが必要です」(伊藤和子弁護士:ヒューマンライツ・ナウ)。
 UPR勧告では「20mSv以下だが高線量の汚染地域からの自主避難者に対する住宅等の生活支援、帰還に対する意思決定に男女共に包括的かつ平等な参画を確保すること、避難基準を年20mSvから1mSvに戻すこと、今後、被災者が必要な医療サービスを受けられること等」オーストリア、ポルトガル、ドイツ、メキシコから勧告された。
■2018年10月:国連特別報告者バスクト・トゥンジャク氏国連総会にて報告。
・日本政府には、子供らの被ばくを可能な限り避け、最小限に抑える義務がある。
・子供や出産年齢の女性に対しては、避難解除の基準を、これまでの「年間20mSv」以下から「年間1mSv」以下にまで下げること。
・無償住宅供与などの公的支援の打ち切りが、自主避難者らにとって帰還を強いる圧力となっている。
■2019年2月:国連子どもの権利委員会による勧告 「自主避難者、特に子どもへの支援などに加え、放射線に影響を受けている子ども達への医療サービスの強化や包括的かつ長期的な健康診断を実施すること、教科書や教材において被爆リスクと子どもが放射線に対し、より脆弱であることについて、正確な情報を提供すること」

井田真人氏による記事 2018.11.01. https://hbol.jp/177765
志葉玲氏による記事 2019.3.11. https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20190311-00117794/ などによる。

 こうした度重なる国際機関の懸念・勧告は日本国内で共有されているでしょうか? 大手マスコミやテレビはこれらのことをほとんど報道しませんから、大部分の国民はこうして国際社会が懸念していることを知りません。国民だけでなく裁判官など司法関係者も知らないようで、最近の原発避難者訴訟など、避難者に対して不十分な補償しかされないという厳しい判決が続いています。国際社会の放射線に関する常識は、国内では通用しないようです。
 今、福島で「人が住めるようになっている」という場所は、国際基準では安全とは言い切れないところがあります。


        
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