p.13-3  住民の安全や健康を確保するため避難指示? ↑前のページへもどる


 地震・津波により住宅が被害を受け避難しなければならなかった住民は沿岸部に限られます。福島県の場合は避難者のほとんどが原発事故による放射能汚染による避難指示や放射能の拡散を心配して各自の判断で避難しました。
 避難態勢が整ってくると、放射線量によって避難区域はおおきく三つに分けられました。だいたい地上から1メートルの高さの線量で、
 年間50ミリシーベルト以上 の帰還困難区域。
 20ミリシーベルトを超える居住制限区域。
 20ミリシーベルト以下の避難指示解除準備区域です。

アニメ:避難地域の変遷 1分58秒 90MB

避難指示が出ていない地域からも、ご自身で判断して大勢の人々が避難しています。こうした方を含めた避難者の人数はきちんと把握されていません。 復興庁と福島県は避難指示を解除して避難用住宅の提供を終了すると、元の住宅に戻ることができなくても避難者数から除いています。「平成30年7月現在、4万4千人」というのはまだ仮設住宅などで避難を続けている人数です。

以下、p.12-3 のコメントと同じです。

 「事故発生後、周辺地域の住民の安全や健康を確保するため、国は住民の避難を指示しました。」 と書いてありますが、実際に福島で放射線から逃れて避難してきた方々の中には、この表現に納得できない方々が多いと思います。
 下の表は、2011年3月11日午後2時46分の東日本大震災発生から5日間の原発事故の進行と避難指示の状況をまとめたものです。 事故の進行は予断を許さず、予防原則に立てば、早くのうちに広域にわたる避難指示を出して、避難に伴う混乱を避けるべきであったのに、 まず、避難命令を出すべき政府が事態の掌握に失敗していることが読み取れます。


 2011年3月11日から、事故による放射能拡散を過小評価し、根拠のない安全をくり返し報道してきた政府官邸。 (それを垂れ流したメディアの責任もあると思います・・・・)  避難にあたって放射性物質の拡散状況を知らせるはずだったSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワーク システム) のデータを活かすことができず、住民の避難は混乱を極めたこと。 そうした状況を考え合わせれば、副読本の表現とはうらはらな現実に気づくはずです。
 実際の避難にあたっては、いわゆる社会的弱者・避難弱者といわれる病院の入院患者の方々に、避難を原因とする犠牲者も出ています。 例えば、避難指示を受けた福島県大熊町の双葉病院には3月14日時点で病状の重い患者146人が残されていましたが、移動を余儀無くされ、 14日と15日に自衛隊によって3回にわたる搬送が行われました。そのうち21人が搬送中や搬送後に死亡しています。 避難に対する準備態勢が整っていなかったためです。
 この放射線副読本のような冊子では、現実に起こったことの反省をきちんとふまえて、今後に向けてどのように改善していこうとしているのか、 そうした記述こそが安心をあたえることにつながっていくと思います。

   
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