p.16-1:友達を傷つけるいじめ  ↑前のページへもどる


「避難している子供たちは、震災や避難生活によってつらい思いをしています。そのような友達をさらに傷つけるようないじめは決してあってはならないものです。」

 まさにその通りです。この文章が意図していることについては異論はありません。福島原発事故で避難している人たちには、何の落ち度もありません。
 しかし、避難している子供たちが、避難先の学校などでどのような思いで過ごしているかということを考えたら、政府や福島県が行っていることは、いじめを助長しているとしか言えません。

 年20mSv以下の地域は、避難指示が解除され、補償は打ち切られていますから、避難先での生活のめどが立っていない人は帰還しなければなりません。しかし、一般人の追加被ばく線量は国際的に年1mSvです。1986年のチェルノブイリ原発事故に見舞われたウクライナ・ベラルーシなどでは、1mSv以上5mSv未満の地域の住民には避難する権利が認められています。放射線被ばくの危険があり、放射線に弱いこどもたちの健康を心配して、帰還に二の足を踏んでいる家族も多いはずです。生活の不安が避難している人たちを襲っています。

 被ばくを心配して、避難指示が出されていない地域から避難している人たち、いわゆる自主避難者に対する住宅無償提供は、次々に打ち切られています。福島県は2017年3月で県が把握している12,000世帯の自主避難者への住宅無償提供を打ち切りました。所得の低い世帯に対し2年間、国家公務員住宅への入居特例が認められていましたが、それも2019年3月で終わります。

 避難地での生活の再建に取り組もうとしても、なかなか難しく、追いつめられている人たちが大勢います。そうした家族の子供たちは、のびのびと安心して学校生活を送れているでしょうか。暗く沈んだ表情をしていたら、今の学校社会ではまさにいじめの標的になってはいないでしょうか。
 家族の生活の不安は、いじめの心配にもつながりかねません。
 いじめの問題にきちんと取り組むのなら、避難者している人たちの生活の不安を取り除くことがまず第一に求められるはずです。  

        
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