例えば、「はじめに」の１行目に「放射線を受ける量をゼロにすることはできません」という記述があります。しかも、この文はあとの本文の中で４回も繰り返されます。

　なぜ副読本の１行目にこう書き、同じ文章を計４回も繰り返すのでしょうか。たぶん、この筆者には「多くの人はゼロが望ましいと思っている」、そして「そう思っている人が多いと、原子力開発がうまく行かない」という思いがあるのでしょう。だから、「本当は放射線は基本的に危険である」という基礎知識を書かずに、「どうせ自然放射線をいつも浴びているのだから、放射線をゼロにすることはできないんだよ」と言って、「少しくらいの放射線を怖がることはないよ」というメッセージを伝えようとしているのです。

　このように、書かれた言葉の裏に隠されているメッセージを「隠れたメッセージ」といいます。 　また、「放射線による健康への影響」のページでは「（放射線の健康影響は）放射線の有無ではなく、その量が関係していることが分かっています」という文が２度繰り返されて、くどい印象を与えていますが、これも同じ隠れたメッセージを伝えようとしています。

　この副読本のその他の部分も、「実害はなかった、復興が遅れているのは風評が原因」というストーリーを伝えようとする隠れたメッセージにあふれています。