原発なくても大丈夫 節電は原発をなくす
年間たったの20数時間のために・・・電力使用量のピーク
電気は新鮮さが勝負
原発無くても大丈夫
やれば出来た 2003年夏
危機をあおったマスコミ報道
節電は原発をなくす
電力政策の問題点 インデックス

 

年間たったの20数時間のために・・・・電力使用量のピーク

 グラフ1は、一日のなかでの電力使用量の変化と、発電種類別の電力供給の割合をグラフにしたものです。1日のうちで、最も電力を消費するのは、午後2時過ぎ【グラフ1:C点】、昼休み【同B点】を終えて、会社・工場などが午後の作業を始めてしばらくした頃です。また、グラフ2は、年間を通じて月ごとの最大電力使用量の変化を
を表したグラフです。年間を通じて最も電力を消費するのは、7〜8月頃です。電気器具の中で最も電力を消費するのは、たいていの場合クーラーですから、真夏の太陽ががんがん照りつけて、気温が高くなった日の昼下がり、会社でも家庭でもクーラーの出力を最も強くしているころが、電力使用量はピークに達します。

TOPへ

 

電気は新鮮さが勝負

 このピークの時間は、午後1時過ぎから午後3時頃までのわずか2時間程度。でもこの頃が電力会社にとっては、一年で一番忙しく、稼ぎ時なのです。「原子力」「水力」はもちろん、「石油・石炭」や「揚水式発電」など、できる限りの発電所を「総動員」して、発電し電力を供給しています。電力は蓄えておくことができませんから、今使っている電気は、今作られたばかりの電気です。
 乾電池のように、電気を蓄えておく効率の良い仕組みができれば、電力会社にとってはほんとうは大助かりなのですが、残念ながら現在の技術ではそれはありません。
 ちなみに乾電池というのは、とても便利なものですが、乾電池を作るときに必要なエネルギーを100とすると、その乾電池を使って取り出すことの電気エネルギーはたった0.4程度です。エネルギー効率はきわめて効率の悪い品物です。
 電力の話に戻ると、夏の昼下がりのこの2時間程度のピーク時でも、停電せず「安定した、質の良い電力をお届けする」ために、全国に数多くの発電所を作っておく必要があると電力会社は言っています。発電所の設備容量は、この数時間・・・こういった日が夏には何日かあるので、合計では十数時間〜二十数時間のために、「余裕を持って」つくっておくのだそうです。別の見方をすれば、この時間以外では、大半の発電所は使われずに、待機状態におかれます。

TOPへ

 

原発無くても大丈夫

 ちなみに、2001年度の全国の発電所の発電能力の合計は2億3030万kw。この年の最大電力使用量は、1億8240万kw。発電所の中には、この年に定期点検や修理などで使用できないものもあるでしょうが、それにしても、発電設備の「余力」はたっぷりあります。この年の全国の原子力発電所の発電容量合計は4574万kwですから、単純に考えれば、原子力発電所がすべて廃止されても、電気は充分に足りていることになります。

TOPへ

 

やれば出来た 2003年夏

 現実に、2003年春、前年の秋に発覚した原発事故隠しの影響で、東京電力管内全17原発が点検のため停止されました。17基の合計出力は1730万 8000キロワットとなります。同電力の01年度の年間発電電力量のうちに占める原発の発電量の割合は47パーセントと、2分の1に近いのですが、それがすべて停止する事態が、03年4月15日に起きました。
 それでも、電力不足は起きませんでした。この年の夏、東京電力は7月末までに無理矢理4基の原発の運転再開にこぎ着けましたが、例年なら電力消費がピークを迎えるときでも、残り13基の原発は停まったままでした。が、はやり停電は起こりませんでした。停電を起こさないために東電は企業に対し、一生懸命に節電やピーク時の電力消費をシフトする取り組みを呼びかけたりしたようです。協力した企業も大変だったと思います。しかし、考えてみるとこれは何も、この年かぎりの取り組みにとどまらせることなく、毎年やれば停まったままの原発を再開させなくても、こと足りるはずです。基本的なスタンスとしてこれまで販売電力量拡大一辺倒だった営業方針を、この夏だけ全面的に大転換した電力会社の姿勢が、一番の問題点だったのではないでしょうか。無理矢理一部の原発を再開したのも、もし全部の原発が停まったままで夏を乗り切ることができたら・・・・実際に乗り切ることができたはずですが・・・「原発が停まれば、停電になる」という電力会社のウソがばれてしまうからだといえます。電力会社に求められるのは、売り上げが減ることも覚悟して、本当のエネルギー・資源の節約を経営理念とすることでしょう。
 幸か不幸か、この年の夏は冷夏で、冷房需要がそれほど伸びなくてすみ、その意味でも電力は不足しませんでした。ちなみに、この年の電力需要のピークは9月11日に記録されています。

TOPへ

 

危機をあおったマスコミ報道

 このときのマスコミの報道の仕方も問題があったと思います。
 例えば、典型的な記事として日本経済新聞社の提供する "NIKKEI NET"の特集記事「夏の電力不足問題」(2003年7月1日、)を紹介します。


 ここでは、原発の停止で夏の電力不足が懸念され、停電することが前提で特集記事を組み、各界に取材しています。東電の担当者はもちろんのこと、すべてのインタビューが停電を必然的なできごととして、その影響の大きさについて述べています。例えば、電力中央研究所浅野浩志氏のインタビューでは、経済的な損失が7月で623億円と、まことしやかな予想をしています。おそらく、どこの新聞・ニュースも似たような論調ではなかったかと思います。
 この記事では、東電へのインタビューの最後に次のように記事を締めくくっています。
 「電力不足の状態で梅雨明けの猛暑は乗り切れるのか。東京電力は、様々な需給対策を進めているものの、電力不足の懸念は解消されていない。結局のところ、停電を回避するには、原子力発電所の追加的な運転再開で供給力を強化するしかない状況にある。電力の不足解消に向けた調整が大詰めを迎えている。」
 原発が切り札のエースとして描かれています。事情を知らない一般の人たちがこれを読んだら、原発再開への期待をもつように誘導していないでしょうか。
 「停電は起こらない」とか「停電は回避できる」とかいった記事は、ほとんど無かったと思います。それだけ電力会社の虚構が一般に広まっていて、みんなが「原発が停まれば、停電するもんだ。」と信じ込まされてはいなかったでしょうか。

 次の表をみてください。東電が売り上げた各年度の最大電力量の推移を表した表です。2001年の夏期の最大電力量が、前年に比べ500万kwあまりも増加していることがわかります。この年、東京電力は大口の契約者に対する電気料金の割引を拡大し、需要量増加をはかったようです。余剰の設備をたくさん抱えてしまった電力会社の本音では、「節電」に逆行する営業をし続けています。大口需要家が、その前年までの電力消費に戻すだけで大幅な節電ができるはずです。電力不足が叫ばれた2003年の夏のピーク電力は前述のように9月11日5736万kwになっています。これは、94年・ 97年とほぼ同じくらいの電力消費量です。【グラフ中 ★印】
 電力会社の言うことを無批判に伝えているマスコミの姿勢も、問題があります。

TOPへ

 

節電は原発をなくす

 また、夏のピーク時に電力需要を押し上げている大きな要因が、クーラーのための電力です。そうならば、暑いときのクーラーの使用を自粛するとか、クーラーの設定温度を1℃でも高めにすると、ピーク時の電力を減らすことが出来ます。このピーク時の電力使用量を少しでも下げることができれば、その節約効果は極めて大きく、原発を含めムダな発電所を作らないで済むのです。(電力会社ではこのことを、「負荷平準化*」と呼んでいます。)

 ちなみに、気温が1℃あがると、全国では170万kwの電力が必要になると電力会社も言っています。これは、最新型原発約1.5基分に相当します。その分逆に節約すれば、原発を含め、発電所を減らすことが出来るはずです。

TOPへ

電力政策の問題点 インデックス