バックエンド事業
バックエンド事業
廃炉費用・・・・ほんとはいくらかかるの?
核燃料再処理・・・・半分だけね?
負担者はだれか
予測不能 未来へのツケ
今は「資源」、でも将来は「ゴミ」・・・明らかに含まれていない費用。
不可能な前提
オルターナティブ
"盤石の原発政策"・・・惰性でつづく原子力
原子力は本当に安い? インデックス

 

バックエンド事業

 原子力発電所で、燃料製造・発電所建設・運転などの「フロントエンド事業」に対し、原子炉の廃炉費用や放射性廃棄物の処理、核燃料サイクルにかかわる事業を「バックエンド事業」と呼んでいます。このうち、すでに手当のすんでいるのが廃炉費用です。1989年より電力料金の中から、各電力会社が積み立てて廃炉に備えています。

廃炉費用・・・・ほんとはいくらかかるの?

 日本原子力発電(電力会社9社が出資する企業)によると、標準的な原子炉1基の解体から放射性廃棄物の処分までに必要な廃炉費用が、2002年6月の段階で約550億円といわれていました。これだけで現在52基ある商用原発をすべて廃炉にするとなると、約3兆円かかることになります。これは東海第二原発・出力111.1万kwをモデルにした試算で、モデルでは解体費用が388億円、原子炉圧力容器などの放射性廃棄物の処理・処分費用が157億円、合計で545億円という見積もりを根拠にしています。
 しかし、実際に解体が始まっている、東海原発出力16.6万kwの場合、解体に約350億円、廃棄物の処分に約580億円、合わせて何と約930億円もの見積もりがなされています。 初めての廃炉処理ですから、いろいろなことを試しながらやるにしても、あまりにも見積もりがいい加減にすぎるのではないでしょうか。実際に100万kwの原発を廃炉にするのにはどれくらいの費用がかかるのか。今稼働中の原発すべての解体費用は? それに伴う積立金はいくら必要なのか? そして、我々の負担は、どれくらい増えるのか、とてつもないツケがまわってきそうです。

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核燃料再処理・・・・半分だけね?

 使用済み核燃料の処理・再処理をめぐって、2003年に電気事業連合会は費用の見積もりを今後80年間にわたり総額18.8兆円と試算しました。 
 うち再処理事業費用が11兆円,高レベル放射性廃棄物処分に係る拠出金は2.6兆円。見積もりは,今後40年間までに発生する使用済核燃料のうち,約半数の約3.2万トンを六ヶ所再処理工場で再処理,残りの約3.4万トンは中間貯蔵にまわすという想定で行われています。

 18.8兆円のうち,MOX燃料加工費用,ウラン濃縮工場バックエンド費用は,燃料加工に関わるのでフロントエンドとし、中間貯蔵費用も再処理に直接関る費用ではないので今回の措置の対象からははずすようです。したがって、このバックエンド事業の対象は,15.1兆円となるようです。
 この、MOX燃料というのは、原子炉でプルサーマル*を行うための燃料です。現実には、そのプルサーマルの試験を行おうとすると、データ改ざんなどの不祥事も重なって原発地元で反対運動が起き、試験すら行えない状況が続いています。

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負担者はだれか

 15.1兆円については,電気利用者から徴収することになるそうです。これまでに発電した分の処理費用、2.7兆円については、これから特定規模電気事業者(民間の発電事業者)の利用者からも徴収するという仕組みだそうです。つまり国民すべてが負担するということでしょうか。これまで、さんざん原発の低コストを訴えてきたのですから、電気事業者が負担してもおかしくないとはおもうのですが、このあたりで電力会社も本音が見えてきました。
例えていえば、大食漢が自分勝手に(制止の声も振り切って)これまでさんざん飲み食いしてため込んだ代金請求を、今店に入ってきたばかりの新しいお客(特定規模電気事業者*)にも一緒になって払わせようとするようなものです。しかも、こうした理不尽な仕組みが、「電気の安定供給」ということを錦の御旗に、まかり通ってしまう状況は、恐ろしいといわざるを得ません。


*特定規模電気事業者:1999年度の改正電気事業法(2000年3月21日施行)により新たに認められた事業で、電気の小売自由化の対象需要家に電力会社の電線路を使って電気を供給する電気事業です。

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予測不能 未来へのツケ

 現段階の技術では正確な試算が不可能な費用もあります。将来費用が高騰しそうなものとして、例えば、高レベル放射性廃棄物のガラス固化体やTRU(超ウラン)廃棄物の地層処分の費用です。この技術は世界でもまだ確立したとはいえません。なんとなくこんな風にできるという構想はあるものの、実証されていませんから、今の段階で経費を見積もってもその妥当性を判断することは困難だとおもわれます。特にTRU廃棄物については、まだ何の制度もできていません。どこまで地層処分にするのか,放射能レベルも決まっていないのに正確な見積もりが出せるとは思えません。
 そもそも、これら廃棄物の処理が本格化するのは、数十年後、放射能レベルをある程度下げてからのことです。「タイムラグ」があると表現されていますが、その間の物価変動のみならず、社会情勢の変化は想像の域を超えることでしょう。基本的に未来の世代に大きな負担を強いることには代わりありません。

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今は「資源」、でも将来は「ゴミ」・・・明らかに含まれていない費用。 

 今回の試算にはウラン濃縮過程で発生する劣化ウランや再処理過程で発生する回収ウランの処分費用は入っていません。将来再利用することを考えて「資源・資産」ということになっているようです。しかし、再利用するためには、そのための技術開発・設備投資に六ヶ所村の再処理工場に匹敵するような巨額の投資が必要になるはずです。しかも、利用できるU235の密度は低いため、再利用される割合はきわめて少なく、その分コストはかかります。技術的な困難も相当なものになるのではないでしょうか。結局は廃棄物として処分することになる可能性が高いと考えられます。今回の試算には、廃棄物として処理する費用はもちろんのこと、貯蔵するための費用も見積もられているのでしょうか。

 再処理をしてつくられたプルトニウムのMOX燃料は、一度きりの使用で使用済みになります。しかし、そのMOX燃料をさらに再処理するとすれば、別タイプの再処理工場が必要になり、その建設費用など含めると費用は30兆円ほどにもなるというのです。
 使用済みのMOX燃料は、再処理後の高レベル放射性廃棄物ガラス固化体に比べると発熱量が6倍ほどにもなり、50年間冷ましたガラス固化体と同レベルにまで冷ますには数百年はかかります。(朝日新聞より)その間、必要となる保管に関わる費用は、今回の試算には含まれていないようです。この使用済みMOX燃料も、将来のために「資源」として貯蔵するというのでしょうか。
 それにしても、たとえ百年間にしても、半端な年数ではありません。今から百年前、日本はまだ明治時代でした。ご存じの通り、日清戦争や日露戦争に明け暮れて、先進国に追いつき追い越せの軍拡競争をやっていた時代です。いまから百年後、いったい日本はどうなっているのでしょう。そんなときまで確実にツケを残すことを私たちはすでに行っているのです。

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不可能な前提

 六ヶ所村再処理工場稼働率100%の前提で今回の試算は計算されています。不可能な前提ででしょう。1975年から四半世紀の運転実績のある東海村の再処理工場でさえ、核燃料サイクル機構のデータをうのみにすれば、比較的順調に運転した98年までの9年間について、この期間でも最大で78%,通常運転時平均で67%の稼働率だったようです。(「動燃30年誌(98.7.)」)
 東海村再処理工場の1977年の運転開始から、2005年9月までの累積再処理料は1089トン。全期間の年平均再処理量は約39トンで、年間計画処理能力210トン/年に比べると、稼働率18.5%ということになります。

 試算では再処理工場操業本体の費用は7兆円余りですから、東海村での稼働率を前提にするだけで数兆円も費用はふくらむことになります。

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オルターナティブ

 再処理に対して、直接処分という別の道、オルターナティブもあるはずです。
試算によると、核燃料再処理は使用済み燃料をそのまま直接処分するのに比べると、 1.5〜1.8倍高いといいいます。1家庭当たりに換算すると、年間 600〜840円の負担増になるというのです。これならばたいしたことないと思うかもしれません。でも再処理を始めてしまうと、これまで述べてきたように実際にこれだけで済むという保証はありません。
 総合エネルギー調査会電気事業分科会・コスト等検討小委員会の報告書の数字を使って単純に計算すると、再処理の結果つくられるMOX燃料の値段はウラン燃料の約13.5倍となってしまうようです。具体的な数字をあげると、4300tUウラン燃料の節約のために12兆円を超えるお金が必要となるそうで、それと同じに使うことが出来る代替のウランの取得価格は9000億円だそうですから、これで実に13.5倍にもなるわけです。資源の「節約」というだけでこれほどの費用がかか
るのはおかしいとは思いませんか?
引用:コストから原発を考えるプロジェクト
http://fukurou.txt-nifty.com/cost/

また、六ヶ所村の再処理工場建設には、結果からいうと2兆4千億円もかかったようです。それでも現実には今ならまだ間に合うこともあります。つまり、工場は出来たけど、実際には動かさない、つまり再処理をしないという道もあります。後始末費用は操業しないままのほうがはるかに安いといいます。いったん再処理を始めてしまうと、施設が放射能により高度に汚染されるため、解体するのに1兆5500億円かかるそうです。操業しなければ、4500億円だということですが、別に解体もしないでそのまま「記念物」としてとっておけばいいと思うのですが。

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"不動の原発政策"・・・惰性でつづく原子力

 2004年10月原子力委員会は原子力に関わる長期計画をまとめました。この中で、核燃料再処理に関しては、核燃料サイクル路線の維持を決めました。その理由として、路線を変えるとこれまでの投資が無駄になるとか、これまで様々な施設を受けて入れてくれていた青森県と国・電力との信頼関係が壊れるとか、再処理技術が継承されなくなるなどといったことをあげています。
 路線を維持・続行すれば、「これまでの投資」を何十倍も上回る負担がかかってくることについての議論は行われなかったのでしょうか? 当面の責任問題に終始して、将来の世代に対する責任を放棄した決定と言わざるを得ません。
 この決定は、再処理工場の稼働に実質的GOサインを出したことになります。2005年1月からは、模擬ウラン燃料などを用いた「ウラン試験」が行われ、2006年3月からは、次の段階の「アクティブ試験」で、六ヶ所村の施設は放射能に汚染さ
れてしまったようです。
 国民の負担はどうでも、これまでの行きがかりを捨てきれない体質が問題です。しかし、窮極的に費用を負担するのは私たち国民ですし、私たちの子孫全体に、より大きな負担がかぶさってきます。国民とその子孫全員の問題としてとらえる視点が必要ですし、国民全員の問題として議論する必要があります。
 あなたならどう考えますか?
参考:Green Hands
http://members.jcom.home.ne.jp/greenhands/index.html

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原子力は本当に安い? インデックス