電源三法交付金 地元への懐柔策
電源三法交付
そもそも「電源三法交付金」とは・・・迷惑料
使い道は指定なしに
圧力団体と支援組織
地域の豪華施設
屋上屋を重ねて
不当支出
実現不可能な事業へ、多額の予算
原子力は本当に安い? インデックス

 

電源三法交付金

 いわゆる電源三法とは、1974年6月3日に成立した次の3つの法律をさしています。

  • 電源開発促進税法
  • 電源開発促進対策特別会計法
  • 発電用施設周辺地域整備法

 電力会社は販売電力量に応じ、1,000キロワットアワーにつき425円を、電源開発促進税として国に納付しています(電源開発促進税法)。このうち、 190円が電源立地勘定で、235円が電源多様化勘定(2003年10月法改正により「電源利用勘定」に名称変更)となります。2003年予算で、この税の総額は4855億円になります。(電源開発促進税率は、今後段階的に引き下げられる予定。)
 もちろん最終的にこの税金の負担は、消費者が電力料金に上乗せされて支払っています。
 納められた税金は、特別会計に組み込まれ、発電所など関連施設の立地及び周辺市町村に対し交付金などの財源にあてられます(電源開発促進対策特別会計法)。

リンク:電源三法制度のしくみ 原子力百科事典Atomica より
http://sta-atm.jst.go.jp/atomica/pict/01/01090901/05.gif

 「電源立地勘定」は、発電用施設周辺地域整備法の規定に基づく交付金及び発電用施設の設置の円滑化に資するための財政上の措置による交付金、補助金、委託費等に係るもので、「電源利用勘定」は新エネルギー開発・導入等に係るものだそうです。
 「電源立地勘定」として、原子力発電関連施設の地元に、どんな用途で、どれくらいの予算が付くのか、次のホームページをご覧下さい。
リンク:原子力百科事典 Atomica より 
「電源地域に対する電源立地交付金とそのメリット (02-02-01-04)」
http://sta-atm.jst.go.jp/atomica/pict/02/02020104/05.gif

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そもそも「電源三法交付金」とは・・・・迷惑料

 交付金制度の制定は1974年。そのころ通産省(当時)資源エネルギー庁の委託で作られた立地促進のパンフレットには、次のように書かれていました。
 「原子力発電所のできる地元の人たちにとっては、他の工場立地などと比べると、地元に対する雇用効果が少ない等あまり直接的にメリットをもたらすものではありません。そこで電源立地によって得られた国民経済的利益を地元に還元しなければなりません。この趣旨でいわゆる電源三法が作られました(日本立地センター「原子力みんなの質問箱�)。」 つまり本来三法交付金は、原発が地域開発効果を持たないことに対する補償措置以外のなにものでもないのです(清水修二福島大教授「原発を誘致する側の論理」1988)。しかし、「雇用効果がない」などとあからさまにいってしまうと、元も子もないので、その後の歴史の中で「地域振興」というまやかしの姿が与えられてきました。そして現在の交付金のしくみでは、電力やエネルギーとは全く無縁の「地域振興」がまさに目玉になった内容へと変身しています。

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使い道は限定なしに

 この交付金の仕組みは2003年10月1日に法改正されました。これまでこの制度は、交付金ごとによって「公共施設の整備」や「電気料金の実質的割引」、「産業の導入・振興」などと用途が限定されていましたが、改正により各交付金を「電源立地地域対策交付金」の一つにまとめることで、現行交付金制度の対象事業が全て実施できるようになりました。
 また、新制度では、他の交付金や別の財源で整備した施設の維持運営費にも活用できるようになりました。さらに、改正の大きな特長としては、新たな対象事業として、「地域活性化事業」を設け、さまざまなソフト事業にも支援できるようになったことだそうです。

 従来の交付金は、「箱物」行政の典型で、公民館・体育館など半恒久的な建築物建設にしか使えず、建てることは建てられても、維持運営費などには使えないものでした。その結果、そうした建築物の維持運営費が、自治体予算を圧迫している状況が生じていました。改訂によりほとんど自治体の独自予算のように、何にでも使える交付金になりました。交付金という名前の、甘いアメを用意して、原発を誘致してもらおうという作戦でしょう。 またこの改訂で、これまでこの交付金の対象であった火力発電所の立地地域を、対象から外しました。原発立地の地元へのアピールをより鮮明にするためだそうです。
 個々の自治体にどれくらいの交付金が支払われるかというと、出力135万kwの原発が建設される場合が、資源エネルギー庁のホームページに紹介されています。

   ◎建設費用は約4500億円。建設期間7年間、という前提
   ◎運転開始10年前から、10年間で391億円。
   ◎運転開始後10年間で固定資産税も入れて計502億円。 グラフ参照

至れり尽くせりの金額でしょう。
 それでも原発の新規立地が進まないのは、やはり命・安全と引き替えに、危険性と隣り合わせの財源を、住民が受け入れないからでしょう。しかし、一部の人たちには、目をくらませるほどの金額になっていることも事実です。

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圧力団体と支援組織

 この交付金は、実質的にほとんど原子力発電関連の自治体に交付されています。関連する自治体の間では、この交付金を団体交渉で獲得するためや、有効な利用法を探るため「全国原子力発電所所在市町村協議会」「全国原子力立地市町村商工団体協議会」なるものが作られていて、活発なロビー活動をしています。

全国原子力発電所所在市町村協議会 http://www.zengenkyo.org/
全国原子力立地市町村商工団体協議会 http://www.jcci.or.jp/machi/dengen/kyougikai.html

 さらにそうした自治体の活動を支援するために、1961年に設立された経産省の外郭団体「財団法人日本立地センター」という組織があります。2004年の総事業費は約20億円。

財団法人日本立地センターhttp://www.jilc.or.jp/

 その中で、各地の自治体を結ぶ広報・PA(パブリック・アクセプタンス)活動や、研修事業などを担当しているのは、

財団法人日本立地センター・エネルギー部 http://www.enepa.ne.jp/

 これらの組織の、予算規模もさることながら、その予算に裏付けされた活動は、各種広報誌発行(対象地域別に7種類の定期刊行物を発行)、TV・新聞・ラジオ等のマスメディアを利用した情報提供、まちづくり・まちおこし、農業振興・漁業振興、小中学生向けの教材作成、学校への講師派遣、高校生クイズ大会、原子力エネルギー問題を考えるセミナー開催、都市部住民と原発関連施設立地自治体との交流、まさにお金に飽かしてありとあらゆる活動をしている
といってもいいような内容です。
 しかし、こうした支援を受けている立地地方自治体は、それでは活性化しているでしょうか? これだけなりふり構わぬお金をばらまいていますから、たしかに地元は一見"潤って"います。立派な公民館・コミュニティーセンタやら、陸上競技場・体育館などのスポーツ施設、学校やら病院やら、軒並み豪華な施設が建設されています。
 次に、それら立地自治体の様子を見てみましょう。

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地域の豪華施設

 福島県東部の太平洋に面した浜通り地方のほぼ中央に位置する福島県双葉郡楢葉町。人口8300人余りのこの町の町役場に隣接する三階建ての「町コミュニティセンター」(写真右)は、収容人員八百人の大ホールを有する双葉郡内最大の文化施設です。国の電源三法交付金を使って建設し1985年にオープンしました。年間を通じてコンサートやミュージカル公演などが行われ、町民の文化活動の核になっています。しかし、現在維持管理には年間七千万円ほどかかります。催し物の主催者が支払う使用料だけではとてもまかない切れないようです。


 電源三法交付金は、発電所の立地を早めに進めることを大きな狙いとしているため、発電所着工から短期間で自治体に支払われます。三法交付金のうち、楢葉町がコミュニティセンター建設に活用した「電源立地促進対策交付金」は発電所の着工から運転開始の五年目まで、道路建設、教育文化施設などの整備に充てることができます。町は同センター以外にも、陸上競技場や野球場などを配置した町総合グラウンド、天神岬スポーツ公園などの施設を交付金でつくりました。いずれの施設も今年間二千万円以上の維持管理費を必要としていますが、それが自治体の財政を圧迫しています。こうした状況は各地の立地自治体に共通しているようです。
福島民報2002/5月29日(水)掲載記事より
http://www.fukushima-minpo.co.jp/topix/201energy/34.htm
 そうした全国の立地自治体が連帯した前述の「全国原子力発電所所在市町村協議会」という組織では、お互いの情報交換や、新たな地域振興の道を探っています。が、本来そうした組織の目的は、自治体の「自立」をめざした運動であるはずです。しかし、高額の施設をつくってしまうと、その維持管理だけでも膨大な費用がかかり、その費用を調達するだけのためでも、族議員を巻き込んでさらなる補助金を獲得するかたちの運動になり、ますます自立から遠ざかる、そんな構図が見えてくるようです。 電源三法交付金は、発電所の立地を早めに進めることを大きな狙いとしているため、発電所着工から短期間で自治体に支払われます。三法交付金のうち、楢葉町がコミュニティセンター建設に活用した「電源立地促進対策交付金」は発電所の着工から運転開始の五年目まで、道路建設、教育文化施設などの整備に充てることができます。町は同センター以外にも、陸上競技場や野球場などを配置した町総合グラウンド、天神岬スポーツ公園などの施設を交付金でつくりました。いずれの施設も今年間二千万円以上の維持管理費を必要としていますが、それが自治体の財政を圧迫しています。こうした状況は各地の立地自治体に共通しているようです。
福島民報2002/5月29日(水)掲載記事より
http://www.fukushima-minpo.co.jp/topix/201energy/34.htm
 そうした全国の立地自治体が連帯した前述の「全国原子力発電所所在市町村協議会」という組織では、お互いの情報交換や、新たな地域振興の道を探っています。が、本来そうした組織の目的は、自治体の「自立」をめざした運動であるはずです。しかし、高額の施設をつくってしまうと、その維持管理だけでも膨大な費用がかかり、その費用を調達するだけのためでも、族議員を巻き込んでさらなる補助金を獲得するかたちの運動になり、ますます自立から遠ざかる、そんな構図が見えてくるようです。

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屋上屋を重ねて

 前述の全国原子力立地市町村商工団体協議会(会長:北村柳之助敦賀商工会議所会頭)が2000年10月に結成されて、自民党などに圧力をかけた結果、その初仕事が2000年暮れ、「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法(原発立地特別措置法案)」の制定として結実しました。原子力関連施設のみに対象を限定した新たな補助金です。補助対象地域を、地元を中心に設置される「立地会議」の決定に任せる、つまり対象地域を曖昧にし、公共事業への政府の補助率を嵩上げし、使途を拡大しました。しかも、自治体の負担分については、地方債を発行できるようにして、その償還を地方交付税で行なえるようです。つまり、自治体の財源に一切負担をかけずに、様々な援助を受けられるわけです。バラマキ政策のなりふり構わぬ拡大といえるでしょう。
 この補助金の目的は、"「原発を立地してよかった」と言えるような地域づくりに邁進"するためだそうです。(同商工団体協議会HPより) これまでの電源三法交付金がかえって立地地域の自立を妨げてきた反省は微塵も見られません。所詮こうした補助金は一時しのぎのカンフル剤にすぎませんし、慢性的な地方自治体の赤字体質は、構造的な問題ですから、どこであれ補助金で一時的に潤っても熱が冷めたらまた同じことの繰り返し。地元の商工会を中心に、さらなる補助金獲得運動を展開する羽目になることでしょう。

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不当支出 

 電源立地交付金を巡っては、各地に黒いうわさがありますが、例えば2001年に会計検査院が2億8000万円の不当支出を指摘した事件があります。

 新潟県刈羽村が政府の電源立地促進対策交付金を使って建設した生涯学習センター「ラピカ」で、ずさんな工事が行われていて、交付金2億6000万円を含む事業費約2億8000万円が不当支出に当たると会計検査院に認定されました。
 この「ラピカ」は本館と茶道館、陶芸館などの施設で、99年秋に完成しました。総工費約62億円のうち交付金は約57億円。政府に無断で設計変更を行うなどの不正工事が次々と発覚。空調の配管を勝手にさびにくいステンレス製に変更したうえ、
1300 万円の腐食防止装置をそのまま設置するなど、経産省の調べでも計248カ所の無断変更が見つかり問題にしていましたが、会計検査院は2億8000万円の不当支出のうち、交付金相当額は約2億6000万円と算定しました。さらに、施設建設などに使われた事業費約55億円(うち交付金約50億円)も、十分に効果を上げておらず「不適切な支出」に当たると指摘しました。

実現不可能な事業へ、多額の予算

 電源開発促進税の電源利用勘定からは、核燃料サイクル開発機構に対して補助金が出資されています。ここ数年減額されてきているとはいえ、2003年度予算で1171億円の予算がつけられて、核燃料サイクルの開発が行われています。核燃料サイクルはまだ実用化していませんから(実用化される見通しもあまりありませんが)、純粋に研究開発・技術開発に関わる政府予算でこれほどの厚遇を受けているものはそうはありませんし、核燃料サイクルの構想自体が袋小路に陥っていながら、これほどの予算をつけるのは不可解としかいいようがありません。ちなみに、ロケット打ち上げなどを行っている「宇宙航空研究開発機構 (JAXA)」(宇宙科学研究所(ISAS)航空宇宙技術研究所(NAL)宇宙開発事業団(NASDA)を吸収統合)の2003年予算総額は約1730億円です。

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原子力は本当に安い? インデックス