生徒用p.1 はじめに | ↑前のページへもどる |
「東日本の一部の地域で水道水や食べ物などを飲んだり食べたりすることを一時的に止められたことがありました・・・」 この表現は、事故はもうすでに過去のこととして記述しています。福島原発事故の影響をできる限り小さく見せようとする意図が働いているのではないでしょうか。この副読本が発行されたのは、事故の起きた年の11月頃です。事故の影響はまだまだはじまったばかりです。 |
生徒用p.3 放射線って、何だろう? | ↑前のページへもどる |
この写真は、スイセンに含まれているカリウム40の放射線を写したものだそうですが、 いま東日本でこの実験をやったらもっとくっきりはっきりと写るはずです。なぜなら福島原発事故で、大量に放出された放射性物質は、東日本を中心に広範囲にふりつもっていますので、おそらくほとんどの植物に水を通じて吸収されているはずだからです。 現在、このような実験をすると、自然のカリウム40による放射線だけでなく、セシウム134・137など人工の放射性物質による放射線も感光して区別がつかないのではないでしょうか。 それほど広範囲に、大量に放射性物質が拡散している現実があり、そのことを指摘したほうが、放射線を身近に感じることができるはずです。 |
最初に子どもたちに放射線について語りかけるのに、福島原発事故のことに何も触れず、スイセンの花のことなどを取り上げています。このことから、この副読本の目的がおのずと明らかになってきます。 今なぜ放射線のことを子どもたちが知らなければならないかというと、福島原発事故で東日本を中心に大量の放射性物質が拡散して、その脅威から子どもたちの健康を守るために、放射線の知識が必要なのでは無いでしょうか。 この副読本を編集した人たちは、放射線の利用を進めるためにこの副読本を作っているようです。それは、放射線や原子力を利用する産業を守るためでもあります。でも福島原発の事故後の現在となっては、条件が変わってくると思うのです。事故についての反省をしっかりと踏まえた上で、放射線から私たちの暮らしをどう守るか、原子力をどのように利用するか、みんなで話し合って考えていかなければならない問題です。 |
生徒用p.4 偶然から発見された放射線 | ↑前のページへもどる |
この実験で使われていたのは、右写真のようなクルックス管と呼ばれる放電管です。学校の理科室などでもこの実験装置を見かけることがありますが、レントゲン博士が実験で確かめたように、そこからは放射線の一種X線(ガンマ線)が出ているので注意が必要です。 レントゲン博士は、最初の発見から7日間研究室にこもってX線に関する論文を書き上げ、発表したとこのとですが、その間やその後の生涯にわたり、かなりの量の放射線被ばくをしているはずです。しかし、まだ、放射線の量の単位や、その身体への危険性も知られていなかった時代ですので、レントゲン博士の被ばく量はわかりません。博士は1923年にガンで亡くなっています。 |
生徒用p.5 身の回りの放射線 | ↑前のページへもどる |
生物と放射線は共存できません!! 身の回りに放射線が昔からあったとしても、生物にとって放射線が必要なものではなく、基本的に放射線は生き物に対して害になるものです。 ■自然放射線って何? 原子爆弾や原子力発電所から出る放射線とはちがい、人間が作りだしたのではない放射線を 自然放射線といいます。その中には宇宙や太陽や地中からでてくる放射線や食べ物の中にある物質がだす放射線がふくまれます。そのために「生き物は地球上に誕生したときから放射線を受けている」という説明よく聞きます。 この副読本の説明も、「放射線は今初めて接するものではなく、自然の中に元々あるものだから、何も怖がることはない」ということを言いたいようです。 でも下の図を見てください。この図は、地球が誕生してから現在まで、地球にふりそそぐ宇宙からの放射線(宇宙線)や紫外線(しがいせん)と、地球の生き物の関係をえがいたグラフです。 図中A :生命が生まれたのは生物に害をあたえる宇宙線がとどかない深い海の底でした。 図中B :生物が浅い海でも生きられるようになったのは、地球上にふりそそぐ宇宙線をふせぐバリアー( ヴァンアレン帯)ができた後でした。放射線が命に危険にならないくらい少なくなったからです。 図中C :海の中に酸素を作り出す細菌さいきんが生まれると、大気中にたくさんの酸素がたまりオゾン層ができました。植物や動物が海から陸に上がって生きられるようになったのはこのオゾン層が命に危険な紫外線を防ぐようになったためです。 このようにみてみると、生き物は放射線の害がすくなくなり、命に害をあたえない場所にひろがっていったことが分かります。 今も私たちが自然の中で浴びている放射線の影響で、わたしたちはガンになったり、その他の様々な影響を受けているのです。 |
生徒用p.5 身の回りの放射線 | ↑前のページへもどる |
食べ物の中に含まれている放射性物質には、カリウム40という物質があります。このカリウムは確かに人間の体にも欠かせない栄養素ですが、放射性カリウム40が、欠かせないわけではありません。放射性のカリウム40は、できれば食べない方がいい物です。 このような身の回りの放射性物質が原因で、遺伝子が傷つき、人間はがんになったり、白血病になったりしているのです。さらに、人工の放射性物質を、カリウム40などのような自然にある放射性物質以外に余計に取り込む必要はまったくありませんから、人工放射性物質は環境中にない方がいいのです。 この部分の記述のように、放射性物質がいくら身の回りにあったとしても、それが人間の体には「無用」であるばかりか、基本的に「有害」であるはずなのに、ただ身の回りに「多く存在」していて、「無害」であるかのような印象を読む者に与えようとしている記述があちこちにあります。放射線・放射性物質に対する心理的な障壁をできる限り取り除いて、放射線・原子力への親しみやすさを養おうとする意図がミエミエですので、注意が必要です。 |
生徒用用p.6 放射線って、どんなもの? | ↑前のページへもどる |
ここで書かれている放射線の「もの」を通りぬける働き=透過作用に関して、物質を透過するときに、ただ透過するだけではないことを指摘する必要があります。とりわけ、生物の体を透過するときには、生物の遺伝情報であるDNAを傷つけたりして、生物にがんなどの障害を引き起こすことがあることの説明が不足しています。根本的な認識として、放射線が生命に対して有害であることを説明しておくべきではないでしょうか。 放射線がDNAを傷つけるのは、そのエネルギーがDNAの化学的結合エネルギーよりも、桁違いに大きいからです。 詳しくはこちらを。 |
生徒用p.6 光と同じように放射線も身の回りにあります | ↑前のページへもどる |
放射線・放射能をどうして身近な存在として理解しなければならないのか、その意図が問題です。小学生が持つべき認識は、基本的に放射線は生き物にとっては危険で、身の回りの放射線は少ないほどよいという認識のはずです。この副読本で文科省とその編集者が意図していることは、放射線は身の回りにあふれているから、恐れることはない、という認識でしょうか。何故、文科省が小学生たちに放射線に慣れ親しんでほしいのでしょうか? 原子力開発を推進するために、放射線への恐怖を取り除き、放射線を「日常のこと」として受容して、原子力への理解を深める、という理由以外にはあり得ないのではないでしょうか。 しかし、福島原発事故以来、たしかに放射線は「身近なモノ」になりました。福島原発からまき散らされた放射能により、東日本のほとんどの地域で放射能は「身近」になってしまいました。そのような状況の中で、子どもたちの「放射線や放射性物質に対する理解」はどのようにあるべきか。それは当然、放射線・放射性物質の危険はどのようなもので、被ばくを避けるためにはどうしたらよいかということを知るためであるべきではないでしょうか。 |
生徒用p.7 ものを通り抜ける働きを利用 | ↑前のページへもどる |
皆さんはお医者さんにかかったときにレントゲン写真をとられたことがあるでしょう。日本にいる人でレントゲン写真を一度もとられたことがない人はまずいないでしょうね。 日本のお医者さんはレントゲン写真をすぐにとりたがります。簡単に撮影できるし、簡単に診断ができるからでしょう。でもそのために日本人が医者の診療などによって放射線を浴びている量は世界でダントツの1位です。 日本人の医療被ばくを世界で一番にしている大きな原因はCT検査です。お医者さんが安易に行うCTなどにたよる医療行為が問題になっています。CT検査による被ばく量は、一般人の年間被ばく限度量1ミリシーベルトをはるかに上回り、1回で5〜8ミリシーベルトの被ばく量です。放射線被ばくによるデメリットと、治療に役立てるメリットをよく考えて利用することが大切です。
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