生徒用p.1-2   風評被害
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 汚染地に住み続けざるを得ない方々に配慮して、「風評」とい言葉を使っています。 しかし、風評という言葉は根拠がないのに悪い評判がたつことをいいますが、 放射性物質によって汚染されていることは事実ですから、根拠がないことばかりとはいえません。 「基準値」より低線量でも、それなりの被害は生じます。
 とりわけ、子どもは放射線に敏感だというのは、国際的にも合意されています。 子どもにとっては、「風評被害」ではすまないこともあるでしょう。

   「基準値以下だから安全」、という表現ではなく、実際の放射線量を公表して、 その場所へ行く・行かない、そこに住む・住まないは個々人の自由であることを保障すること、 汚染のレベルがどの程度であれ、汚染地に住みつづける人にはきちんとした補償をし、 移住の希望があればそれを権利として認め、移住の保障をする、そうした対応が必要ではないでしょうか。

 「基準値」というのは、これだけ守っていれば絶対安全ですという値ではありません。「基準値」とは経済的概念なのです。 本来絶対安全を追求すれば、基準は「ゼロ」が望ましいのです。しかし、それでは経済的費用が膨大になるので、これくらいはガマンしてくださいという、 「ガマン量」なのです。

 そして、放射性物質で汚染したのは、東京電力とその原子力政策を推進してきた政府の責任です。 「風評被害」も放射能汚染もその責任はすべて東電と政府にあります。 「風評被害」の責任も東電・政府がきちんと補償すべきなのです。住民・市民同士が反目するのは筋違いです。
 また、もしそんなに補償の範囲を広げたら、賠償額が巨額になって日本経済の足を引っ張ってしまうという議論があります。 だから補償はしないでおこうというのは、被害を他人事としか考えていない議論です。 原発事故はそれだけの被害を与えてしまうことを覚悟しなければ、原発を動かすことは出来ないはずです。 事故が起こってしまったからには、そうしたエネルギー政策を選んでしまった国として全力を挙げてその補償をしなければならいと考えます。

 この副読本5ページには、1ページ全体が風評被害を取り上げています。 住民の被害のうち現在の最大の課題は「風評被害」であると言おうとしているのでしょうか。 線量が高くて住民が避難しゴーストタウンのようになってしまった町並みのことも、 実際に起こっている健康被害のこともこの副読本には取り上げられていません。
 復興・再生に向けた取り組み(6ページ)を取り上げていますが、今、福島原発事故を経験した私たちがするべきことは、 事故の教訓にしっかり向き合うことではないでしょうか。そして、その第一歩は、事故を風化させずに、 現在起こっていることをしっかりと全国の子どもたちに知らせることだと思います。
 

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