p.11-4   歯のX線写真を撮るとき
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■強制被ばく
 歯医者さんに初めて行くと、まず、有無を言わさず全部の歯のレントゲン写真を撮られることがあります。本人が気づいていない虫歯などを発見するためでしょうが、そんなことは頼んでないのに、撮影されることがあるようです。筆者が撮影を断ると変な顔をされました。(2014年7月横浜市内)
 でも、そんな検査は必要あるんでしょうか?
 日本の医療被ばくは、世界一です。高価なX線撮影機器を購入した医師が、X線撮影を多用するために患者の被ばくは増大しています。しかも、放射線についてなおざりな使い方が見受けられます。例えば、放射線副読本の写真にもあるような、放射線遮蔽用のエプロンを着けて撮影されることは、筆者の経験では一度もありませんでした。
 また、学校で行われている、胸部レントゲンの集団検診では、レントゲンの間接撮影が行われています。直接撮影に比べ、被ばく量が多いので問題の検査です。【■注】 働く人たちも、40歳以上になると職場の定期健康診断で年に一回の受診が義務づけられています。(2005年以前は全年齢が対象でした)

■国民被ばく制度の存続・・・舞台裏
 昔、栄養状態が悪かったころに日本では結核にかかる人が多かったのも事実ですが、今日ではほとんど検査の必要はありません。日本以外の国では、胸部レントゲン写真の有効性を認めている国はありませんし、厚生労働省も2005年にいったんは廃止の方向で動き始めました。
 それなのに何故検査は続くのでしょうか?
 健康診断で胸部レントゲン検査をするには、移動式の検診車を動かすためなどの仕事ができます。検査を廃止すると検査関連の業界では数千億円規模の仕事がなくなってしまいます。
   検査廃止が議論になったとき、業界関係から猛烈な反論がありました。その結果、国民の健康のことよりも、業界の都合で検査が存続しているのが実態です。
 高齢社会を迎え、国の医療費が高騰している時に、必要性の疑わしいどころか、国民の放射線被ばくを増大させる検査を今後も続けるべきなのか、考えなければなりません。
 普通の市民(公衆)の年間の放射線被ばく線量限度は1.0mSvです。しかし、医療被ばくには制限がありません。被ばくのデメリットをしのぐメリットがあると信じさせられているからです。我が国の医療被ばくは福島原発事故以上かもしれません。

日本人のガン、3.2%は医療被ばく
        英国医療専門誌 ランセットに掲載 2005.2.10.読売新聞より

 日本国内でがんにかかる人の3.2%は医療機関により放射線診断で被ばくが原因のがん発症と推定されることが、国際的研究で明らかになった。
 英国オックスフォード大学チームが、15か国を対象に1991−96年に調査、日本の医療診断によるがん発症がもっとも高いと判明。
     CTの高い普及度が背景に。2004年:国内に7920台配置
日本国内での医療診断によるがん発症は7,587件でがん発症者の3.2%
             英国では0.6%、米国では0.9%
日本の検査数は15国平均の2倍近く、がん発症は2.7倍

日本:CT検査装置の普及進む、人口100万人当たり64台で最高、次位のスイスでさえ26台程度。検査をすればするほど医師の収入増につながるが、CTの過剰検査は要注意、超音波など害のない診断への移行が望まれる。


■争えない事実
 日本で医療被ばくばくが多くなっている原因は、先にも触れましたが、医療機械の大量普及に原因があると思われます。あまりにも手軽に検査できる環境があります。上記のランセットレポートについて、「がん患者の3.2%が医療被ばくによる」という点については業界関係者などからさまざまな反論が出ていますが、争えない事実は日本のCT機器数と、医療被ばくが他国に比べてダントツに多いことです。このことを問題視している業界関係者の発言はほとんどありません。

【注】:胸部レントゲン撮影での被爆量は、直接撮影で0.06-0.17mSvです。間接撮影では1.0mSvです。生殖腺などを保護して余分な被ばくを避けるための鉛入りのエプロンを装着して撮影するようにしましょう。
 ちなみに、一回のCT検査では、100〜200枚(以上)のレントゲン写真を撮りますので、受ける線量は10〜20mSvにもなります。
     右の表は「緊急被ばく医療研修のホームページ」より⇒

■低線量放射線リスク論争へのリンク

○リスクはたいしたことはないという意見
酒井一夫 (電中研)「低線量放射線影響リスク」(2006)

●リスクは要注意という意見
高木学校 崎山比早子(医学博士)のコメント(2010.4.)

京大原子炉実験所 今中哲二 低線量放射線被ばくとその発がんリスク(岩波「科学」2005.9.)

坪野吉孝 CT検査がんリスク上昇の可能性 オーストラリア 130607

同上の論評 国立保健医療科学院生活環境研究部



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