p.12-4   100mSvで30.5%がん死
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■数字のマジック?
 「100mSvを受けたとすると、がんで亡くなる可能性がおよそ0.5%増加する。」
 この数字を見て、100mSvの被ばくなんてたいしたことはないと思うでしょうか?
 次の表は、厚生労働省の人口動態統計による資料を元に、それぞれの死亡率を日本の人口1億2700万人(2012年)を分母にして計算してみました。

順位: 死亡原因 2012年 1995年%(2012年)
一位 その他の不慮の事故 10338人 7104人 0.0081%
二位 不慮の溺死及び溺水 7963人 5588人 0.0063%
三位 転倒・転落 7761人 5911人 0.0061%
四位 交通事故 6414人 15147人 0.0051%


 0.5%死亡率が上昇するというのは、かなり大きな数字です。死亡率0.5%というのは、2012年の交通事故死者の数字の約100倍です。つまり、日本人全員に当てはめると交通事故死者の100倍の人が亡くなる割合になります。
 交通事故死者を減らす努力は並大抵のモノではないはずです。その100倍に相当する死者を出すかもしれない危険について、素通りしてしまっていいとは思えません。
 直線的比例割合で考えると、100mSvの100分の一、つまり、1mSvで0.005%になり、交通事故死者の割合と同じになる計算です。 1mSvの被ばくに対して、交通事故対策と同じ努力(事故撲滅キャンペーンなど)を傾けているでしょうか。

  ■個人に当てはめたら
 こうしたリスク表示には、本来比較できないモノを無理矢理数字にしてしまうところがります。しかも、何万人という集団を対象にする数字なので、どこかで、誰かがその不運に見舞われることを意味しています。その事象のリスクがどんなに小さくとも、その「誰か」が、たとえば私という個人に起こったら、私にとっては100%の不運なのです。私の中の0.5%ではすまされない。それが統計的な確率の意味するところです。
 「0.5%の死亡率上昇」これだけのリスクがあるのなら、なんとしても避けようとする努力をするべきではないでしょうか。たとえば、逆に交通事故で死亡する確率は0.0051%だからたいしたことはないと教科書に書くでしょうか。
 リスクを考えるとしたら、そうした想像をするべきです。

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