生徒用p.3-1   安全対策が不十分であった福島第一原発
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 この言い方は、安全対策が十分な原発が他にあるかのような表現です。 安全対策の想定が甘かったことも事実でしょうし、万全な安全対策を施したとしても、 想定外の事態が起こることがあります。十分な安全対策ができる原発というものがあり得るのでしょうか?
 現実におこった福島原発事故では、想定外だからといって誰も責任をとろうとしていません。 (さまざまな情報から、津波の高さなど想定外ではなかったことが明らかになっています。) 事故によって生命を奪われたり、生活を破壊されたりした人々への責任はどうなるんでしょうか。
 そもそも原子力発電所だったから、これだけ被害が多くなったのです。 普通の火力発電所では、放射性物質は発生しませんし、これほど広範囲な被害が出るはずがありません。  原子力発電所をつくることにより、人々は大きなリスクを背負うことになります。 そのリスクを克服することの出来る安全対策は、はたして出来るのでしょうか。

 安全対策で具体的に問題になるのは、事故時の避難態勢です。
 福島原発事故後、原発から半径30kmが避難対策を施すべき緊急時防護措置準備区域(UPZ)と指定されました。 (ちなみに事故までは避難すべき範囲は10kmまででした。) しかし、福島では原発から40km以上も離れた飯舘村も、放射線量が高くて人が住めない地域になっています。 半径30kmでは十分ではありません。
 また、避難対策をどこが立案するのかという問題もあります。避難対策は原子力規制委員会がつくられたときから、 この委員会の仕事ではないことになっています。 自民党・安倍政権は原子力規制委員会が規制に適合していると認めた原発は、地元がよいと言えば再稼動させるという立場です。 その結果、避難対策には規制委も政府も責任を持たず、地元自治体に丸投げされることになりました。 立地地元自治体は再稼動最優先のところがほとんどですから(注:)、まともな避難対策はできていません。 過酷な事故で放射能が放出されると想定しながら、 それから逃げるための避難対策がほとんどとられないまま原発を動かすことが出来るのです。これがこの国の「安全対策」の現実です。
 ちなみに、アメリカの原発は避難計画が出来て初めて認可されます。

「原発事故に備えて避難対策をしなくても原発を動かせるのは、先進国では日本だけ。」
                  (古賀茂明:元経済産業省官僚 毎日放送MBSラジオ2014年1月24日放送より)
          全国の原発周辺の人口分布:原子力規制委員会


         ■注:ただし、浜岡原発の地元では再稼働について意見が割れているようです。

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