生徒用p.6-2   新たな基準値
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 2012年4月、新しい食品の基準値が定められました。  おおむね、食品からの1年間の累積被曝量が1mSvになるようにとして 定められた値でした。(暫定基準値では年間5mSv。)
 そもそも放射能に絶対安全なレベルは存在しません。被ばく量は少なくとも、それなりの影響はあります。放射線は微量であればその影響が他の人体に有害なものの影響に隠れされてしまって、どれくらい危険なのか、きちんと定量的に測定できないので、明確に危険だとはいえないだけです。
 そこで、基準値というのは、厳しく設定すれば安全性は高まりますが、そのためにはコストが高くつくのです。設定を緩くすれば、安全性は低下しますが、コストはかからなくなります。ですから、基準値を定めると言うことは、すぐれて経済的・政治的な作業なのです。ですから、「新基準値だから安全性は確保されている」とはいえません。

 暫定基準値・新基準値めいっぱいの食品を一年間食べ続けるとどうなるでしょうか。下の表は、日本人の典型的な食事のパターンで、暫定基準値・新基準値ぎりぎりの食物を一年間食べ続けた場合の被ばく量の推定です。同じ摂取量で、ウクライナの基準で放射性物質の量を計算してみました。




 食品の放射性物質汚染の単位は Bq(ベクレル)です。 人間の被ばく量の単位は、mSv(ミリシーベルト)です。 この単位は、次のような式で換算されます。



 この推定には、人間の体内で蓄積していく放射性物質については考慮されていません。単純に食べ物の中にある放射性物質の量を1年間合計しただけです。
 食べ物を通じて体内に入り込んだ放射性物質は、その化学的な性質で体内の各臓器などに吸収されたり排出されたりします。福島原発の汚染水が流出してその影響を受けている海産物については、トリチウムを始め、ストロンチウム、プルトニウムなど、さまざまな放射性物質の汚染が問題になってます。たとえばストロンチウム90は、カルシウムと同じ化学的性質のふるまいをしますから、骨などに蓄積されます。セシウム134/137は、カリウムと同じように、内蔵を始め体内の各所にたまっていきます。




 体内にとどまっている間に、体内の臓器にごく近いところから放射線を出し続けますから、大気中で被ばくする(外部被ばく)のに比べると、射程の短いベータ線やアルファ線などによる被ばくも考えなくてはなりません。(内部被ばく:副読本p.●参照)
 しかも、放射性物質は身体の新陳代謝(物質のいれかわり)のしくみで、排出されるまでに時間がかかります。次の表は、2011年4月に福島原発事故を受けて、ICRP(国際放射線防護委員会)が特別に発行した勧告に記載されていたグラフです。




 毎日10Bqずつの放射性物質を取り込んでいると、1年ぐらいで飽和していきます。摂取する量・排出する量・自然崩壊して減衰していく量がバランスして、だいたい1400Bqぐらいで飽和していきます。あらゆる食品が汚染され、一品から摂取する放射性物質は少なくても、さまざまな食品からちょっとずつ取り込んでいれば、一日10Bqというのは、結構現実的な数字です。ですから、新基準もけっして安心できる数字ではありません。


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