p.1-14  M:放射線の影響を減らすための「除染」という作業 ↑前のページへもどる

 ふるさとの家で暮らしたい、避難を余儀なくされた方々の思いに応えるべく汚染地域では「除染」作業が行われています。「除染」によって、安全な暮らしを取り戻すことができるのでしょうか?

 「除染」作業で現在行われていることは、放射性物質を家屋や公共施設などの生活空間から移動させるだけの「移染」作業です。

 一般的な民家の「除染」範囲は、生活空間から水平方向で20m、高さ3mの範囲の中だけです。その範囲の中に、左図のように高さ3mを超える樹木などがあっても、高さ3m以上の場所の「除染」は行ってくれません。範囲外の樹木から落葉すれば、また生活空間の中が汚染されてしまいます。また、生活空間から20m以上離れた場所は「除染」範囲ではありませんから、家の周りの森の中に一歩入れば、汚染されたままです。森の中に入って、野草を摘んだり、薪を集めたりとか、これまで自然の恩恵にあずかりながら暮らしていた暮らしは戻っては来ません。山野から集めてきた薪を燃やすと、灰は高濃度の放射性汚染灰になりますから、薪を燃料にしたり、薪ストーブを使ったりすることはできません。もちろんこどもたちも、森の中に入って遊ぶことはできません。

 「除染」=「移染」は人々の暮らしの空間のごく一部からしか放射性物質を移動させていませんから、こどもたちも含めて、人々が事故以前のようには暮らすことができません。
 「除染」=「移染」によって集められた「汚染土」の中の、放射性物質セシウム137の放射能はまだ無くなっていませんから、膨大な量の「汚染土」はセシウム137の放射能が減衰して充分安全になるまで百数十年、監視が可能な場所で保管しておかなければならないと思われます。
 原発事故はこれほどにも私たちの生活と自然を破壊してしまい、その影響は簡単には取り除くことができないようにしてしまいました。

        
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