p.1-20  S:何をすべきか考えるきっかけ ↑前のページへもどる

 「一人一人が事故を他人事とせず、真摯に向き合い、災害を乗り越えて次代の社会を形成するためには何をすべきかを考えるきっかけとなることを願っています。」
 もう二度と原発事故を起こさない次代の社会を形成するために考えることは大事なことです。そのためには、福島原発事故がなぜ起こったのか、その原因と責任の追及が必須です。それなくしては正しい対応策は考えられません。
 それと並行して、むしろ優先されるべきことは、きちんと事故の後始末をつけることです。まだ、事故の被害を受けて避難している方々が4万人ほど(2019年2月復興庁)いらして、生活再建にあたっています。避難指示が出なかったけれど自主的に県外へ避難した方は、復興庁の示す約4万人という人数の中には入っていません。そうした方がどれくらいいるのかさえ、把握されていません。
 まず、避難する権利を認め、帰還してもしなくても、きちんと生活再建への道筋をつくる支援が必要です。

 文科省の念頭には2020年の東京オリンピックのことがあるかもしれませんが、オリンピックは復興の役にはほとんど立っていないことを大方の福島の人たちは見抜いています。
 NHKが2019年3月9日、事故後8年目を直前にして、夜7時のニュースで右写真のようなアンケート結果を紹介しました。アンケートは、2018年12月〜19年1月、岩手・宮城・福島の4400人余りを対象に実施し、そのうち回答は1608人でした。オリンピックが復興の役に立っているかどうか聞いた設問で、役に立っていると答えた人は15%ほどしかいませんでした。60%の人が役に立っていないと回答しています。

 ニュースではアンケートの紹介の次に、帰還困難区域の方がぼろぼろになった自宅を紹介しながらオリンピックに否定的な意見を述べていました。このニュースのアーカイブはNHKのサイトではすでに見ることは出来ません。他のニュースは見ることが出来るのに、おかしな話です。

   次代の社会を形成することを考える前に、まず現在苦しんでいる被災者に寄り添うことこそ求められているはずです。そのためには、きちんと避難する権利を認め、被災地に帰還してもしなくても、しっかりと生活の保障をしていく必要があるのではないでしょうか。


        
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