p.16-4:  未来に向かって、日々、一生懸命頑張っている避難者 ↑前のページへもどる


「(ふるさとをはなれて避難生活を送られている)その方々はつらい経験を乗りこえ、未来に向かって、日々、一生懸命頑張っておられます。」・・・美しい文章ですね。原発事故で避難した人々に何の落ち度もありませんし、どう考えても理不尽な話です。しかし、その人々の足を引っ張っているのは誰でしょうか?

 深刻ないじめが起こったことはたしかに問題です。しかし、避難している方々の困難さの中で、いじめ問題だけにフォーカスしていることも、問題です。放射線副読本のこの部分を読んで、避難者の方々の抱えるさまざまな困難を思いをはせながら読み進むと、続いて、『いじめを防ぐには、・・・・・』という文章になっていて、そのギャップになんだか違和感を憶えます。
 こどもたちが日々の生活の不安を抱え、それでもけなげに学校に通っていたら、明るくのびのびと学校生活を過ごすのは難しいでしょう。こどもたちの不安を取り除いてあげるには、安定した生活を補償してあげるのに越したことはないはずです。

   除染してもまだまだ高い放射線レベルに、帰還に対して二の足を踏んでいる人々は大勢います。あるいは、避難指示はなくても自主的に避難をつづけている人々もいます。
「こども被災者支援法」では、「支援対象地域での居住・他地域への移動・帰還を自らの意思で行えるよう、いずれを選択しても適切に支援」することが掲げられていますが、国と福島県は、避難者から生存の基盤である住宅を奪う避難用住宅無償提供の打ち切りをすすめています。
 2017年3月には避難指示が出されていない地域からご自身の判断で避難した住民への住宅無償提供が打ち切られました。苦しい生活の中でまだ汚染が残る元の住宅に戻るか、子どもや高齢者の生活環境を変えないことを選んで、避難先で住宅を自費で確保するかの選択を迫られる状況に追い込まれました。
 避難指示地域では、避難指示が先に解除された地域から住宅の提供が打ち切られています。これまでに避難指示が解除されている南相馬市などからの避難者用住宅は2019年3月末で終了します。町の大半が帰還困難区域のため全町避難が続く大熊町と双葉町以外は、浪江町、富岡町、飯舘村、葛尾村では避難指示が解除されていない帰還困難区域も含めて2020年3月末に住宅提供を終了すると発表されています。

 「未来に向かって、日々、一生懸命頑張っている」避難者のためには、生活の不安を取り除くことが行政には求められるはずですが、現実は逆行しています。
 放射線への不安には根拠はあります。その不安ときちんと向き合って避難者の生活を補償することこそが、こどもたちがのびのびと学校生活を送るための条件となるといえるでしょう。

        
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