教師用p.12 飲食物の暫定規制値について ↑前のページへもどる

 ここに書かれている内容は、人命よりも経済的効率を重視する、ICRPの基本的発想そのものです。
 「(暫定規制値は)合理的に達成可能な範囲内で適宜、この暫定値は見直される。」という表現は、背後に経済的合理性の発想が潜んでいます。すなわち、たっぷりと費用をかければ安全性は高められるが、だからといってむやみやたらに規制を厳しくするのではなく、"合理的に達成可能な範囲で"規制しよう、という考え方です。
  コストとベネフィット、経済と人命とが天秤にかけられています。
  コストを負担するのは、原子力事業者でしょうか、それとも、社会一般の消費者でしょうか。ベネフィットを得るのは、原子力事業者でしょうか、それとも、一般の人々でしょうか。 高校生達にこの問題を考えてもらったら、安全性を多少犠牲にしても経済的効率を重視しようと考える高校生はどれほどいるでしょうか?
 原子力・放射能をめぐる問題は、私たちにそうした根源的な問題を突きつけます。

  下表は、日本人の一日の食物の平均摂取量をもとに、暫定基準値・新基準値(2012.4.より)・ウクライナの基準値で、各基準値ぎりぎりの食料を食べたときの一日のセシウム摂取量(ベクレル)、およびそれから年間のセシウム摂取量(ミリシーベルト)を計算したものです。
 現実には、すべての食材で基準値めいっぱいの食材を食べることはあり得ませんが、しかし、基準値というのは、そこまでの被ばくは「許される」あるいは「ガマンさせられる」値です。暫定基準値では、年間5mSvもの内部被ばくが許容され、新基準値でも年間約0.8mSvの内部被ばくまでガマンさせられることになっています。ウクライナの基準値は、およそその60%の被ばくになります。まだ日本の基準値は高いのではないでしょうか。
 ちなみに、100Bq/kg という数値は、原子炉等規制法(2005年改訂)で定められた 放射性廃棄物のクリアランスレベルと同等であり、 コンクリートなど建設資材などへの低レベル放射性廃棄物の再利用が認められている値です。再利用可能な放射性廃棄物と同等のレベルで、食品の放射線基準も定められていることになります。



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