【よくわかる原子力】ホームへもどる   制作:原子力教育を考える会 & 反原発出前のお店(高木学校・TEAM高木)

  文部科学省発行

  【 コメント・リンクなど全面改定しました 】 2013.May.

   このページは、文部科学省が発行した副読本について、その内容と問題点を検証するページです。

   高校用 
   中学校用
   小学校用
                         

  


■トピックス■
111208.文科省放射線読本制作の舞台裏/1209.文部科学大臣釈明

このページの利用の仕方
●問題の記述のあるところには、
このような雲のような枠や、赤い枠が描かれています。
●その場所についてのコメントは、画面の左右にある  ボタンにリンクを張ってありますので、ボタンをクリックしてください。
同じ画面がコメントに切り替わります。
●元の画面に戻るには、画面上下の《前のページに戻る》をクリックして下さい。
●また、副読本のページ画像をクリックすると、そのページのPDFが別画面で大きく表示されます。              


検証ページへのリンク (個々のコメントは、htmlファイルになっています。)

高校用・・・・・

高校生徒用 高校教師用

生徒用コメントのみ全文 教員用コメントのみ全文


中学用・・・・・

中学生徒用 中学教師用

生徒用コメントのみ全文 教師用コメントのみ全文


小学校用・・・・・

小学校生徒用 小学校教師用

生徒用コメントのみ全文、   教師用コメントのみ全文





 文科省制作のオリジナルの副読本は こちら でダウンロードできます。


■副読本全体としての問題点■

@:今、何故放射線についての知識がこどもたちに必要なのか、という問題意識が希薄、というより、ほとんど欠落しています。この副読本では、放射線の効用やメリットについては非常に細かいことまで書いてあるのに、放射線の危険性や悪影響についてはほとんど書いていません。例えば、電離作用の説明には工業での利用が書いてあっても、DNAを傷つけることが書いてありません。ほとんどの高校生は理科で分子の結合についてや遺伝について学習するにもかかわらず、これでは放射線が生物に影響する基本を理解することができません。まるで、本当のことを教えることを避けているかのようです。
 今、福島原発事故によってまき散らされた膨大な放射性物質にさらされて生活しているこどもたちに必要なのは、放射線のメリットに関する知識ではないはずです。
 今何故この時期に放射線に関わる教育が必要なのかという、具体的な問題意識と現実の状況を明確に教材の内容に反映するべきです。従来の原子力開発推進のための教材と何ら変わるところのない内容に多くのページが割かれているということは、文部科学省として、従来の原子力政策・教育に対する反省が十分になされていないことの証です。

A:日常的な原子力施設周辺の放射線モニタリングのことを今知ってみても、ほとんど役にはたちません。(p.17)これも、単に安心安全を宣伝するためなんでしょうか。この内容は3.11.の事故以前に、原子力推進のために文科省が制作した副教材とまったく変わっていません。
 問題は、そうしたモニタリングやシミュレーションのデータが、福島原発事故時に避難すべき住民たちに知らされなかったということです。この問題の反省について一言も言及がありません。この反省なしには、どのようなシステムがつくられていても無意味です。

B:今回の福島原発事故に際して、どれくらいの放射性物質がまき散らされ、どんなところが濃度が高いのか、それによって環境や生き物・人間たちにどんな影響があるのか、どの様に行動すればよいのか、いちばん知りたい具体的なことが書かれていません。高校生用であるならば、少なくともヨウ素・セシウム・ストロンチウムなど、大量に飛散した放射性物質について、きちんとした説明があるべきです。

C:放射線に対してこどもたちのほうが影響を受けやすいこともきちんと書かれていません。大人もこどもも同じように、一般的ながんにかかる確率的なことのみ書かれています。ですから、こどもたちが放射線を出来るだけ避けて暮らしていくにはどうしたらよいか、こどもたちの目線に立って必要なことが書かれていません。現在の非常事態の緊急性が感じられない記述です。

D:放射線被ばくの先例としては、チェルノブイリ原子力発電所事故が筆頭にあげられるはずですが、その事故への言及は一言もありません。
 ベラルーシやウクライナの現状について、汚染の状況、食品の被ばくのこと、被ばくを避けるための現地の人々の工夫・自治体の取り組み・NPOの活躍など、有用な情報は豊富にあるはずです。現在の福島の被災地にとっても、また、放射線と向き合って今後数十年と暮らさねばならない東日本の人々にとって、そうした情報こそが必要な情報になるはずです。

E:被曝の影響については、国際放射線防護委員会ICRPの判断だけが正しいように取り扱われていますが、ICRPはいくつかある提言機関の一つに過ぎません。ICRPへの批判も存在するし、ICRPの勧告より厳しい基準を勧告している団体もあります。
 また、放射線の影響は発ガンだけではありません。ガン以外の病気について、いろいろな調査結果が公表されています。ICRPの判断だけを取り上げ、放射線の影響は発ガンだけのように取り扱うことには問題があります。
 ちなみに、Wikipedia のICRPに関する記述には、次のような部分があります。
・・・・(ICRPが1950年に)再構築された際に、放射線医学、放射線遺伝学の専門家以外に原子力関係の専門家も委員に加わるようになり、ある限度の放射線被曝を正当化しようとする勢力の介入によって委員会の性格は変質していったとの指摘がある[※]。
ICRPに改組されてから、核実験や原子力利用を遂行するにあたり、一般人に対する基準が設けられ、1954年には暫定線量限度、1958年には線量限度が勧告で出され、許容線量でないことは強調されたが、一般人に対する基準が新たに設定されたことに対して、アルベルト・シュバイツァーは、誰が彼らに許容することを許したのか、と憤ったという。

注※市川定夫氏(「環境学」:遺伝子破壊から地球規模の環境破壊までー第2版 藤原書店、1994)によると、ICRPに組織変換してから原子力関係の専門家が委員に加わるようになり、性格が大きく変わり、原子力産業が成り立つ範囲に線量限度を据え置き、基準運用の原則を後退させ、規制の低減が見送られるようになったという。

F:これまで文部科学省が制作してきた副教材などには、国策として推進されてきた原子力開発に対し、ほとんど根拠を示すことなく安心安全をこどもたちに教え込む(刷り込む)ような内容が扱われていました。文部科学省にあっては、まず、そうした従来の方針に関して、どのような問題点があったのか、きちんと検証し、改めるべき点を明確に打ち出してから、副読本などの制作に当たるべきです。



制作:原子力教育を考える会 & 反原発出前のお店(高木学校・TEAM高木)   【よくわかる原子力】ホームへもどる