生徒用p1-4   「事故を他人事とせず・・・・」
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 悲惨な福島第一原発事故が起こってしまった現在、 中学生・高校生たちにこうした呼びかけをすることは大切なことです。 この国に住むすべての人々が力を合わせて、事故に対応しなければならないことは言うまでもありません。
 しかし、その事故が起きるまで、事故の危険性を訴える人々を無視し、 原子力政策を推進してきた文部科学省は、きちんと事故の総括をして、反省したでしょうか。 原子力政策の推進の旗印を文部科学省は現在も降ろしてはいません。 そうした自分たちの反省もせず、「他人事にしない」配慮を呼びかけるこの厚顔無恥さかげんにはあきれるばかりです。
 ただし、こうした文言はこの副読本制作に関わった人々の尽力により書き込まれたと思われます。 文部科学省自らも、「他人事にせず」きちんとした総括をすることが求められているはずです。 そうした組織としての反省をわたしたちは今後も追求しつづけたいと思います。

 また、「今後どのように対応し、課題を克服していくべきかを考えるきっかけとなることを願っています。」とありますが、 ここで言われている「課題」とは、なんのための課題でしょうか?   風評被害を克服し、福島に人々を帰還させ、事故など何事もなかったかのように原子力開発を継続するための課題でしょうか?
 ここで考えられている「課題」とは、「原子力を利用するに当たっての課題」であり、「原子力を利用しない」という 選択肢が排除されています。

 私たちの視点で福島原発事故後の「課題」を整理してみましょう。
@:まず福島から避難されている方々の生活再建の補償をきちんとすること。
A:福島原発事故の事故の後始末と廃炉関連・・・・・
   ・事故由来の膨大な放射性廃棄物の管理
         "処理"ではありません、"管理"です。
   ・海洋汚染も含んだ汚染水対策
   ・原子炉の廃炉スケジュール・目標の再検討
         福島原発の現在の「廃炉計画」はどう見ても実現不可能
   ・作業中の労働者被ばくの軽減、及び作業者の待遇改善
   ・後始末に関わる人材の確保・長期的養成システム etc.etc.
B:福島原発事故の原因の徹底究明と、責任の追及
   安全対策よりも、利権・利益重視の原子力産業・原子力ムラの体質
   にかかわる問題の徹底究明
C:原子力産業全体の後始末・・・
   ・原子炉開発企業の社会的責任コンプライアンスの追求
        現在の原子力損害賠償法では原子炉メーカーの責任は問われない
   ・各地の原発と核燃料サイクル施設全体をどう管理していくか
   ・高レベル放射性廃棄物を含めた、放射性廃棄物の管理
D:将来の再生可能エネルギーを中心としたエネルギー利用のありかた

   現在、まず最優先でなすべきことは、福島から避難されている方たちの生活再建の補償をきちんとすることではないでしょうか。 汚染の状況は単なる風評だから心配ない、と避難者を説得するのではなく、 事故前からの基準であった年間被ばく1mSv以下で暮らすことのできる生活を保障すべきです。
 福島でそうした生活ができない場合は、移転してその地で生活を再建するためのサポートをきちんとすることです。 避難した市町村・コミュニティーをそっくり移転させることも必要かもしれません。 そのためにこそ人々が力を合わせることがもとめられています。

 わたしたちはとりかえすことのできない事故を経験したという共通理解が必要です。 原子力開発を継続し、日本中の人々が福島原発事故以前のエネルギー浪費生活を復活させることが課題ではないと確認しましょう。


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