生徒用p.8-4   福島の子どもたち
↑前のページへもどる

 こどもたちの生活の様子を伝えるこの記述が、文科省の副読本に載ったことは画期的です。
 この記述の背後にある、こどもたちの現実を想像することが必要です。
 こどもたちがこうした状況に置かれている原因は、放射能汚染にあることを確認しておきましょう。

□以下、p4-5 と同じです□
 緊急事態で地域がバラバラになるような避難の実態によって、大人たちのコミュニティーだけでなく、 こどもたちの人間関係もバラバラになりました。各地の避難場所に散っていったこどもたちの通う学校は、 同じ仮設住宅に暮らすこどもたちの間でも、てんでんばらばらになっています。こどもたちを受け入れる側の 小中学校の準備が間に合わなかったためです。
 副読本の記述では、移転した旧浪江小に残った人数の問題だけが取り上げられていますが、そうしたてんでんばらばらの環境で学校に通わざるをえなくなったこどもたちの心情はどのようなものか、思いやってみることが大切です。
 さらに、こどもたちのこうした実情から、崩壊したコミュニティーを「復興」させることの難しさを考えることができます。

 福島の子供たちの多くは外遊びができません。放射線量が高くて、グランドにいる時間が制限されているところが多いのです。文科省・県教委がグランドでの活動を解禁しても、保護者者がこどもたちの放射線被ばくを心配して、外遊びを控えるように指導していることもあります。思いっきり外遊びができないことで、こどもたちの肥満度が、全国平均 10.0%(児童数660,004人)に対して、福島では 17.4%(8,638人)。全国一です。また、運動能力の低下も確認されています。運動不足が原因ではないかといわれています。


■保養プロジェクト 
 低線量でも長期にわたって放射線を被ばくしているチェルノブイリの子どもたちは、免疫力が低下していて、さまざまな病気にかかりやすくなっています。そうした子どもたちを放射線の影響の少ない土地に一時的に転居させると、免疫力が回復して元気になることが実証され、各地のNPOなどがそうした保養プロジェクトに取り組んできました。

参考: チェルノブイリの子どもたち
NPOチェルノブイリのかけはし

 福島の子どもたちにも、チェルノブイリの子どもたちと同じような症状が現れています。そこで日本でも、福島の子どもたちを対象に、放射能の影響の少ない土地でのびのび過ごしてもらおうと、各地で保養プロジェクトが取り組まれています。

参考: 保養情報:子供たちを放射能から守る福島ネットワーク
 

 そのような保養プロジェクトの一つとして、Days Japan の広河隆一さんたちが取り組んでいる、NPO法人沖縄・球美の里 の活動を紹介します。

 私たちの目的は、福島の原発事故によって被災した子どもたちの健康維持を支援することです。

 チェルノブイリ事故の後、日本でも原発が必ず事故を起こすと言い続けてきた多くの人がいました。しかし残念なことに事故を止めることはできませんでした。そして多くの被災者が出ました。政府やメディアが「安全」という言葉を繰りかえした結果、多くの人々が被曝をしました。そして今も人々は避難生活を余儀なくされたり、放射能の値の高い地域に住み続けています。場所によっては、チェルノブイリでは居住禁止区域になっているのと同じレベルの汚染地で、子どもたちが住んでいます。福島原発事故は、2年以上たった現在に至っても、多くの人々を苦しめています。そしてチェルノブイリ事故による影響が27年近くたった現在でも続いていることを考えると、日本でもまだまだ影響は続くでしょう。

 これは人災ですから、救援や支援も責任者たちの手で行われるべきという考え方もあるかもしれません。そうした運動も大切とは考えますが、同時に時間は待ってくれません。責任者たちが動いてくれるまで、子どもたちを放置することはできません。

 その広範な被害のうち、汚染された土地に今も住んでいる子どもや、事故当時被曝した子どもたちは、一定期間保養することによって、健康を回復し、将来の病気の発症を防ぐことが可能です。

 「沖縄・球美の里」は、子どもたちが汚染されていない土地でのびのびと遊ぶことでストレスから解放され、汚染されていない食物を食べることで、体内被曝の進行から解放され、抵抗力、免疫力をつけることを目的とします。

 チェルノブイリ原発事故の後、放射能は人々の免疫機能を冒しました。その結果さまざまな深刻な病気も発生しました。子どもたちが病気を発症するのを防ぐために、すぐれた医療に期待する人々も多いでしょう。それも大切なことです。しかし免疫機能が放射能で冒されるのを防ぐためには、保養が役立つということを、私たちは20年以上にわたるチェルノブイリの被災地救援の仕事から学びました。そこではこれ以上の被曝から子どもたちを守ること、つまり体内被曝を防ぐために安全な食べ物を食べること、汚染地でさまざまなストレスの中で過ごしていた子どもたちを解放し、のびのびと過ごさせることによって、私たちは子どもたちの病気の発症を避けることができると信じています。

NPO法人沖縄・球美の里 目的 より





↑前のページへもどる   検証TOP▲