p.16-3: 科学的根拠や事実に基づいて行動していくこと | ↑前のページへもどる |
「根拠のない思い込みから生じる風評にまどわされることなく、信頼できる情報かどうかを確認し、科学的根拠や事実に基づいて行動していくことが必要です。」・・・文科省の主張していることを具体的に見てみましょう。 ■文科省の「科学的根拠」は国際的な標準とはいえない。 文部科学省がここで主張する「科学的根拠に基づいた行動」とは、何を指すのでしょうか。 "20mSv/年までの被ばく地域は居住に問題なく、100mSvまでは被ばくしても直ちに健康に影響はない。" ということのようです。しかし、これは国際的にはあまり通用しない主張のようです。 "放射線被ばくにはここまでなら大丈夫というしきい値はなく、少しの被ばくでもそれに応じて健康に影響がある。" という考え方、これをLNT説(しきい値なし直線説)といいますが、文科省などによると「科学的根拠にもとづいていない」説ということになるようです。しかし、こちらの考え方を現在ではICRP(放射線防護委員会)も採用していますし、国際的には通説となっています。 そして、国際的な基準に基づいて国連人権委員会などは、現在日本政府がとっている放射線被ばく年1mSv以上・20mSvまでの地域への帰還政策をめぐり、再三にわたって人権侵害の指摘をしています。 ■『風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略』 国民の大多数は放射線に対して不安を抱いています。そしてその不安には正当な根拠があります。しかし、政府・当局は国民の不安にきちんと向き合おうとせず、「風評」であるとか「科学的根拠がない」などと、マスコミなどを動員した多数派工作、ないしは世論操作によって"不安の火消し"に一生懸命です。それが、復興庁が中心となって進めている『風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略』(p.16-2コメント参照)の取り組みです。この放射線副読本もこの『強化戦略』の一環でつくられているようです。 この『強化戦略』では、福島の"復興"を進めるため、復興の妨げとなる問題を"風評"ときめつけています。さらに、学校教育まで巻き込んで、私企業の販売拡張戦略のようになりふり構わぬ世論操作を進めていこうとする復興庁・政府の姿勢を見ることができます。 福島の復興は大切です。しかし、安全性に配慮しないで見せかけだけの復興を追求したのでは、民意はついて行きません。現実に、避難指示が解除されても富岡町・浪江町・飯舘村・葛尾村・楢葉町など、子どもたちは戻ってきていません。(学校在籍者はいますが地元に居住している子どもはきわめて少ないようです。子どもたちが戻らないのは放射線以外の理由もあるとは思いますが・・・) 情報化の進んだ現在、私たちは世界中の情報を瞬時に入手できます。日本の取り組みは国際的に通用しないことを私たちは知ることができます。 その上で、政府当局にどのような施策をとらせるべきか、考えていきましょう。 |
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