p.12-6   一人あたりの自然放射線2.1mSv/年
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■自然放射線年間 1.5mSv→2.1mSv こっそり改訂
 2013年5月、放射線医学総合研究所(放医研)が発行している「放射線被ばくの早見図」が改訂されました。それまで日本の自然放射線被ばく量は年間1.5mSvだったのが、2.1mSvにこっそり改訂されていたのです。その理由を放医研は次のように説明しています。   クリックすると大きく表示します→

 2011年12月に「新版生活環境放射線(国民線量の算定)」が発行されたことから、根拠となる論文を精査の上、必要に応じ当該論文の著者に研究手法等を確認すること等によりその信頼性を検証し、2.1 mSvの値を採用することといたしました。値が変わった理由の一つに、食品中のポロニウム210による内部被ばく線量が計算に加えられたということがありますが、論文の著者に事実関係を確認する等の検証を経て、2013年5月の改訂時にこの値を反映しました。 「放射線被ばくの早見図」について(放医研HP 2013.7.)

   「根拠となる論文(報告書)」が改訂されたということですが、この報告書は電力会社幹部らが役員を務める原子力安全研究協会が出したものだそうです。報告書は国内外の論文を検証して、主に魚の内臓などに含まれるポロニウム210による内部被曝の線量を考慮して、全体の被ばく量を上方修正したといいます。ポロニウム210はたばこの葉にも含まれているそうです。
 しかし、昨今の日本人が魚の内臓やたばこをそれほど摂取しているとは思えません。しかも原発事故の影響は考慮されていないそうですから、どうしてこの時期に数値の訂正があったのか、納得のできる説明ではありません。
 ちなみに、東日本では福島原発事故により拡散したセシウム134・137の影響で、バックグラウンドの放射線は軒並み上昇しています。これらの影響も加味した新しい数値が必要なはずです。

 参考:国内地域別自然放射線量 資源エネルギー庁2010 クリックすると大きく表示⇒
 参考:今回の改訂とポロニウム210について
     広島大原爆放射線医科学研究所 細井義夫氏の資料

■放射線被ばく早見図 そのほかの改訂
 新副読本に掲載されている放射線被ばくの早見図では、旧副読本の早見図と比べると、書き換えられた点がその他にもいくつかあります。                         クリックすると大きく表示します→
  
     旧副読本 新副読本
100mSv (100mSv以下)ガン死亡が増えるという
         明確な証拠がない
(100mSv以上)ガン死亡のリスクが線量とともに
徐々に増えることが明らかになっている。
胃のX線精密
検査(一回)
0.6mSv 3mSv
一人あたりの
自然放射線
世界平均2.4mSv  (削除) 


●胃のX線精密検査 一回で3mSv (p.12-4と同じ)
 旧副読本の早見表では、胃のX線精密検査は1回で0.6mSvになっていました。それと比べると、新副読本では胃のX線検診の被ばく量が大幅に大きくなっています。一定年齢以上の成人の方の検診では毎年のように実施されているバリウム検査による被ばくです。造影剤であるバリウムを飲んで、胃にたまっているところをずっとX線をあててモニターしながら胃の撮影をするわけですから、旧副読本の数値は明らかに誤りです。がんの早期発見のためということですが、この被ばく量を考えると、胃カメラによる検査の方がよいのではないかと思われます。p.12-4参照

●100mSvの問題は、いわゆる「しきい値」の問題です。旧副読本では、多少の放射線なら害はないと主張するために、「(100mSv以下では)ガン死亡が増えるという明確な証拠はない」となっていました。しかしこの表現については「(100mSv以下で)ガンが過剰発生しないと科学的に証明されていると誤解する人もいるので表現を改めた」と放医研は説明しているそうです。そもそも100mSvという値には何の根拠もないことをいうべきです。
 新副読本の表現でも、「100mSvを超えたところからはじめてガン死亡のリスクが発生する」というように解釈するのは間違いです。現在世界の共通認識は「LNT仮説(しきい値なし直線モデル)」ですから、どんなに低線量でもリスクは被ばく線量に比例すると考えた方がよいでしょう。

LNT仮説をめぐって

■ガンだけではないリスク
 ちなみに、放射線被ばくのリスクはガン死だけではありません。放射線による障害はチェルノブイリで起こった様々な病気のことを考えてみる必要があります。チェルノブイリの救援に長年携わっておられるNPO"チェルノブイリ救援中部"の資料をご紹介します。
 

   チェルノブイリで起こった様々な病気
   ● 心臓病 ● 脳血管病 ● 糖尿病 ● 先天異常 ● 疲れやすい
   ● 自律神経失調症 ● 免疫力低下による感染症 など
   ● 癌・白血病は10% 以下 

   ガン・白血病は放射線による病気の1割以下にすぎない。
   放射能の影響は「加齢」である。   


NPO"チェルノブイリ救援中部"の資料より



 「加齢」とは、通常より早く年をとることにより高齢者に特徴的な様々な症状、すなわち、成人病のような諸症状が若年層や子どもたちに現れているということです。


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