放射線J

■この章の内容■
1:放射線ってどんなもの
2:放射線の種類
3:自然放射線って何?
4:放射線と放射性物質

5:半減期って何のこと?
6:放射線の強さをあらわす単位は?
7:外部被ばくと内部被ばく
8:放射線の量と障害の関係


9:急性障害
10:晩発障害
11:放射線と細胞・DNA

原子とは?@、 A、 B
 

   放射線は身体に悪いの?(4)


■放射線と細胞のしくみ・DNA
 人が全身にエックス線やガンマ線を1ミリシーベルト被ばくするということはどういうことなのでしょうか?
 全身に 1ミリシーベルト被ばくするということは、身体の全ての細胞の核に放射線が平均して1本通ったことになります。図ではわかりやすいように細胞の核の中を通った放射線だけを書いてありますが、この密度で他にも放射線は通っています。



 前のページの図にあるように6,000から7,000ミリシーベルト以上を一度にあびるとその中で生き残る人はほとんどいません。これはその人の全身の細胞の核に放射線が6,000本から7,000本以上通った事になり、この後で説明するように身体の設計図であるDNAがずたずたに切れてしまい、細胞が増えることができないからです。半分の人が死ぬ量は3,000から4,000ミリシーベルトといわれ、細胞の核に放射線が3,000本から4,000本通ったことになります。

 放射線による傷害は他の病気とちがい治療して治るというものではありません。なぜでしょう? それは身体の設計図=DNAがこわれてしまい、新しく細胞が生まれないからです。人の皮膚を例にして考えてみましょう。

 皮膚からは毎日古くなった細胞がアカとなってはげ落ちています。それでも皮がむけてしまわないのは、その下から新しい細胞が増えてきて死んだものをおぎなうからです。皮膚にかぎらず身体を作っている細胞には寿命があって、古くなると死に、死んだ細胞が新しく増えた細胞に交代します。細胞が新しくふえるためには、細胞のなかの生物の設計図にあたるDNAが、右上の図のようにそっくりにコピーされるしくみが必要です。これは胃や腸や血液などいろいろな臓器ぞうきで行われていて身体はいつも同じような状態にたもたれています。

 放射線は左図のようにDNAを切断してしまいます。少しの放射線ならば、DNAの傷はあるていど自動的に修理されて、細胞は正常にもどることもできます。
 しかし、たくさんの放射線を浴びるとDNAがずたずたにこわれてしまい、DNAを正常に修理することができません。細胞が増えるために必要な情報が失われたり、修理ミスが起こったりして、細胞は増えることができません。そのため死んだ細胞を新しい細胞がおぎなう事ができなくなります。
 そうなるとどうでしょう? 皮膚や腸の表面はあかむけになり、そこから大量の血液が流れだしてとまりません。
 血液の細胞を作る骨髄こつずいでも細胞が増えませんから、細菌と闘う白血球はっけっきゅうや血を止める働きをする血小板けっしょうばんもできなくなり、細菌による感染が起きたり、大量に出血したりして死亡します。
 このような変化が、放射線を浴びてから短い時間の内に起こる急性障害きゅうせいしょうがいの正体です。





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