核兵器と核実験C

   アメリカ国内の核実験

ハンフォード核施設
 長崎に落とされたプルトニウム核爆弾ばくだんが作られたのは、ワシントン州にあるハンフォード核施設かくしせつです。
  オークリッジ( テネシー州)、   ロスアラモス( ニューメキシコ州)、とならんで原爆開発の中心でした。

 ハンフォードでは、1949年グリーンラン実験 じっけんといわれる人体実験が行われました。大量の放射性物質を、周囲の住民に知らせずにわざと空気中に放出し、こっそりとその影響えいきょうをしらべたのです。周辺の住民には甲状腺がんこうじょうせんがん他いろいろながんがふえましたが、当時その理由はわかりませんでした。一人の勇気あるジャーナリストの6年間にわたる追求によって実験の事実が明らかになったのは1986年のことです。

 米・ソ連の冷戦時代れいせんじだいは両方の国が核兵器を競争で作っていったために、安全対策はおろそかになりました。毒性どくせいの高い危険な廃液はいえきを入れておくタンクからは猛毒もうどくのプルトニウムをふくむ放射性物質や化学物質が大量にもれだしました。それが地下水をよごし、今では近くを流れるコロンビア川に入りこんでいます。この汚染をとりのぞく方法はありません。鮭さけ、川魚、流域の生物が放射性物質を取り込み、これらを食べる人々の健康をおびやかしています。コロンビア川は太平洋に注いでいますから、将来は海全体が汚れることになります。

 詳しく知りたい方は「21世紀核時代負の遺産(中国新聞)」を見てください。


アトミックソルジャーと風下住民
 アトミックソルジャーという言葉を聞いたことがあるでしょうか?
 核爆発を起こした後、爆心地ばくしんちに敵がいることを想定そうていし、突撃とつげきする訓練をしたり、キノコ雲の中に飛行機でつっこんで行き、放射性物質を集めたりして被ばくした兵士のことです。ぜんぶで20万人以上もいます。

 『被ばく国アメリカ』という本があります。原題は”Killing Our Own”「自国民を殺す」という意味です。アメリカは広く、砂漠のように人の住んでいない場所があるとはいえ、核実験をすれば、放射能は風に乗って広がり、やがては地上に落ちてきます。下図は82回行われた大気圏内核実験たいきけんない かくじっけんのたびに風向きを調べ死の灰がどのように広がったかを地図の上に落としたものです。アメリカ国内がいかに汚されているか分かりますね。

   図1,核実験による放射能雲の通った道『Under the Cloud 雲の下』より。

 これら核実験がおこなわれたときに風下にいて死の灰をあびて被ばくした「風下住民かざしもじゅうみん」の中には、白血病はっけつびょうやがんで死亡したり、健康をわるくした人が多数でました。また、直接の被ばくや放射能で汚れた草を食べた家畜がたくさん死にました。これらの被害は核実験のためだとして、住民はアメリカ連邦政府れんぽうせいふを相手取って裁判を起こしましたが、最高裁判所さいこうさいばんしょで住民側が負けました。



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