親として原子力教育に思うこと

 

 現在高校2年生になる娘が小学校6年生の時に、学校で電力会社の方の原子力発電に関する授業を受けてきました。これはその学年の先生方の2002年度から始まる「総合的な学習の時間」に向けての試行錯誤の取り組みであったようです。その授業を受けた子供たちの感想文を娘が持ち帰り、それを読みながら一緒に話し合ったときのことを今でも覚え ています。私は現在、幼児・小学生・中学生を対象とした算数(数学)・国語の学習塾の指導者をしています。ここでは月に一回の科学実験教室も実施しています。指導者となって5年が過ぎました。我が子の関わってきた学校教育にいろいろな思いを抱き、現在この職にあるのです。当然職業柄、学校教育や2002年度の指導要領の改訂内容、そして来年度実施される教科書の改訂(小学校)などには、一般の親御さんよりも情報は持っていると思います。しかし、ここでは、一人の子供の親として、そして塾に通ってきてくれている子供たちの指導者としてではなく、この子たちの親にもなったつもりで思いを書きます。

 まず感じていることは、学校で習ってきたことすべてが子供たちにとってそれが大義になってしまう、ということです。これを大げさだととられる方々もいらっしゃるかと思いますが、多くの子供たちを見て実感していることです。ノートの取り方や計算の方法、考え方などが担任の先生によってコロコロと変わります。担任の先生が替わると、先生にあわせることに子供たちは神経を使っています。こういった中で子供たちが学校で習ってきたことが、子供たちの中でどういう位置付けになるかを考えてみてください。次に感じていることは、今の子供たちの学習意欲の低下です。与えられたものを与えられたようにこなしはするけれど、それはどうしてなのかを考えている余裕がないように見受けられます。考える過程がとても楽しく、わくわくする物であってほしいけれど、子供たちは結果のみを求めます。「どうしてそうやったの?」との問いに対しては「学校でそう習ったから」や「ただ何となく、当たってる? 間違ってる?」との応えが戻ってきます。形だけこなしていてもその実が飲み込めていないために、そのうちにこなせなくなってきてしまうという現実が立ちはだかっています。「考える」という過程を通して得られる物は多いはずです。しかし学校教育では結果のみが重要視されているようです。このような状況だからこそ、「考える力」や「生きる力」ということがいわれるようになったのでしょう。 2002年度の指導要領の改訂、そして「総合的な学習の時間」がこれの解決策になるはずなのでしょうけれど・・・。「総合的な学習の時間」は教科書がなく、取り組み方が各学校に委ねられています。この時間の趣旨をとらえて積極的な取り組みをしている学校とそうでない学校との格差は大きいようです。このような時間が設けられたことにより小学校でも原子力教育は可能になったと思います。エネルギー問題として、そして環境問題としてのいずれからでも取り組めます。ここで問題となるのが、指導者の考え方や指導方法になるのだと思います。わが娘が小6の時に持ち帰った子供たちの授業の感想は「電気を大事に使おうと思った。」「原子力発電は二酸化炭素の排出量が少ない」「原子力発電はなくてはならないものだ」というようなものが多かったと記憶しています。学校という場で行われたこのような一方的な授業に鳥肌が立ちました。しっかりと子供たちはそこで話されたことを鵜呑みにしているではありませんか。先にも述べたように学校の子供たちに対する影響力はとても大きいものです。このような授業のあり方に腹立たしさを覚え抗議に行くつもりだったのですが、娘に行かないでくれと懇願され踏みとどまりました。学校というシステムの中にこのような問題が入っていくことの難しさを痛感した次第です。逆に100パーセントこれを否定した授業を展開した場合、その仕事に従事している親を持つ子供たちはどのように感じるのでしょうか? 現在のあるべきことを、客観的に伝えるということはとても難しいことだと思います。今回、この講座で現在の国の取り組み方や出回っている教材の問題点を知りました。これでいいわけがありません。多くの先生方はわが娘の時のようにそのままこれを利用していく場合もあるでしょう。しかし、「総合的な学習の時間」の取り組み方は一方的な授業形式ではないはずです。自分たちで調べ、発表していく形式がとられるはずです。だからこそ、この講座を機に発足した「原子力問題を考える会」のホームページは大きな役割を担って行くことと思います。期待しています。親は、学校の指導方針になかなか口を出せない現状があります。地域に開かれた学校を、そして子供たちに押しつけることなく、自分たちで考えて生きていくことを伝える教育を、 学校の先生方にお願い致します。

高木学校 Bコース 第6回講座報告集 『原子力と環境教育を考える』より

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